ビットコインとイーサリアムは高値圏を維持、だがアルトコインが苦戦している理由とは
高い希薄化
多くのアルトコインでは、数年先まで予定されているアンロックや配布によって、トークンの供給が常に希薄化している。これは現状、トークンのほとんどがロックアップされたり、初期投資家によって購入されたり、エコシステムの開発や助成金に充てられているためだ。 例えば、イーサリアムのレイヤー2ネットワーク、アービトラム(Arbitrum)のトークン「ARB」は、その供給量が大幅に増加したため、時価総額が10億ドル(1600億円、1ドル160円換算)から25億ドルに上昇したにもかかわらず、昨年9月に記録した史上最安値に近づいている。 もうひとつの例はソラナで、その供給量は毎日7万5000トークン(現在の価格で約1000万ドル相当)ずつ膨れ上がっている。 「ETFによる資金流入や債券の買い戻しによる一定の受動的な買いがある株式とは異なり、暗号資産、特にアルトコインにはその逆で絶え間ない売り圧力がある」と暗号資産ヘッジファンド、レッカー・キャピタル(Lekker Capital)の創業者クイン・トムソン(Quinn Thomson)氏はXに投稿した。 売り圧力の大部分は、ベンチャーキャピタルファンドが過去数年間に立ち上げられたプロジェクトへの初期投資で利益を確定したことに起因する。 「ベンチャーキャピタルファンドは、市場が急落するなか、2022年第1四半期に130億ドルを投資した。AI(人工知能)がより注目を集めるテーマとなったことで、これらのファンドは現在、投資家から資本の返還を迫られている」と10xリサーチ(10x Research)の創業者マーカス・ティーレン氏は語った。 ここ数カ月のように、より小規模でより投機的な暗号資産に対する市場の意欲が減退し、取引高が減少している時に、この供給ショックを吸収するだけの需要はない。
新規資金の流入不足
暗号資産市場への流動性流入も過去数週間で停滞、あるいは逆転しており、このことは主に暗号資産取引の仲介手段として使用されているステーブルコインの時価総額が示している。 TradingViewのデータによると、4大ステーブルコインであるテザー(Tether)のUSDT、サークル(Circle)のUSDコイン(USDC)、ファースト・デジタル(First Digital)のFDUSD、メイカー(Maker)のダイ(DAI)の時価総額合計は、今年初めに300億ドル拡大した後、4月以降横ばいとなっている。 取引所のステーブルコイン残高は、トレーダーや投資家にとってはすぐに使える手元資金に相当するが、40億ドル減少し、2月以来の低水準となったとアナグラムのパートナーであるデビッド・シャトルワース氏は、ナンセン(Nansen)のデータを引用してXに投稿した。 「これは、今後大規模なアンロック(ロック解除)が予定されているトークンや、新しい(トークン)、エアドロッププログラムに特に悪い影響を与える」(シャトルワース氏) 最近ローンチされたブロックチェーンブリッジのワームホール(W)、利回り付き合成ドルのエセナ(ENA)、レイヤー2ネットワークのスタークネット(STRK)のトークンはすべて、最高値から約60~70%下落しているうえに、今後数年間で数十億ドル相当のトークンが配布される予定だ。 季節的な傾向も小規模トークンには弱気で、6月は通常、アルトコインが下落する月となっている。 TradingViewのデータによると、TOTAL.3と呼ばれる指標で把握されるビットコインとイーサリアムを除いた暗号資産の時価総額は過去6年、毎年6月に減少している。 今月も例外ではなく、TOTAL.3は現在までに11%下落している。 |翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸|画像:mana5280/Unsplash|原文:This Is Why Altcoin Investors Struggle Despite Bitcoin, Ether Sitting Near Yearly Highs
CoinDesk Japan 編集部