毎日のように接してきた「ナイスな水原一平通訳」頬こけやつれた「別人」に
ドジャース・大谷翔平投手(29)の銀行口座から巨額の金を盗んで不正送金したとして銀行詐欺などの罪に問われた元通訳の水原一平被告(39)が14日(日本時間15日)、罪状認否のためにロサンゼルス連邦地裁に出廷した。すでに罪を認める司法取引に応じているが、この日は手続き上の理由から形式的に無罪を主張した。司法省によると、次回審理で罪を認める見通しだ。現地取材した村山みち通信員が、水原被告の様子を「見た」。 【写真】報道陣に囲まれても無言を貫いた水原一平被告 * * * 私はこれまで何を見ていたのか―。自分に問いながら、モヤモヤした気持ちで久しぶりに水原被告を見て、自分が彼のことを何一つ知らなかったと実感した。大谷をエンゼルス時代から取材してきた記者の一人として、水原被告はほぼ毎日のように接してきた人だ。 「おはようございます」「お疲れさまです」と日々声を掛け合い、コーヒーの雑談もした。ちょっとモソモソした口調で秀逸な通訳をする姿、クラブハウスでアメリカ人選手たちとポーカーを楽しむ姿、球場の目立たぬところで誰かと電話をしながら、たばこをスパスパ吸う姿、さまざまな「一平さん」を見てきた。 だが、彼から人間らしさはなくなったように見えた。能面をつけたような固まった表情。少し頬もこけ、やつれたか。法廷から出てきた時、我々メディアに目をやったが「こちらを見ているのに何も見ていない」ようなうつろな表情だった。 6階から降りるエレベーターに乗り込んだ彼を追い、飛び乗った。私の腕から10センチも離れていない、真隣に立つ180センチ台の長身の彼からは、球場ですれ違う時にはいつもしていた、たばこのにおいもなかった。私が知っていた「ナイスな水原通訳」はこの人と別人か―。1階までの数十秒、エレベーター内は完全な沈黙。真っすぐ扉を見つめる水原被告は、外界を全てシャットアウトしているように見えた。(村山 みち)
報知新聞社