「アウストラロピテクスが最初の人類」は昔の話? 「人類のルーツ」の最新情報をアップデートする
「えっ? 最初の人類はアウストラロピテクスじゃないの?」。あなたの教養は30年前の常識のままかもしれません。 【イラストで見る】ラミダス猿人「アルディ」 2022年のノーベル医学生理学賞受賞で注目が集まっている進化人類学。急速に発展するこの分野の最新成果をまとめた『人類の起源』(中公新書)の著者、篠田謙一国立科学博物館長が監修を務め、同書のエッセンスを豊富なイラストで伝える『図解版 人類の起源』より、一部抜粋・編集してお届けします。 ■最初の人類はアフリカで生まれた
私たちサピエンス種が属する「ホモ属」は、一般に人類として括られるグループですが、ホモ属の誕生以前のはるか昔から、さまざまな化石人類が存在していました。 DNA研究が推測する現代人とチンパンジーの分岐の年代は、およそ700万年前とされていますが、その時代の人類につながる化石がアフリカ大陸で見つかっています。2001年にチャドで発見されたサヘラントロプス属です。 さらにケニアで発見された600万年前のオロリン属、エチオピアで見つかった2種のアルディピテクス属を総称し、「初期猿人」と呼んでいますが、現在のところ、これら3つの属の系統的な関係はほとんどわかっていません。
次に人類進化のステージに登場するのが30年前の教科書にも載っていた「アウストラロピテクス属」。比較的早い段階でアフリカの広い地域に暮らしていたとされています。 ■3つの属の「初期猿人」 サヘラントロプス属をはじめとする初期猿人が、最初の人類と考えられる理由は骨格的な特徴にあります。人類の特徴である脳容積の増大に先立って「直立二足歩行」が完成しますが、それぞれの骨格の断片がその可能性を示しています。
最古の人類は700万年前!? サヘラントロプス属 2001年にチャドでほぼ完全な形の頭骨の化石、サヘラントロプス・チャデンシスが発見されました。 推定される身長や脳容積はチンパンジーと同程度。しかし、脊髄と脳がつながる大後頭孔(だいこうとうこう)の位置が前寄りにあることから、背骨の真上に頭骨が垂直にのる構造、すなわちヒトの特徴である直立二足歩行の可能性を示しました。 また、犬歯が臼歯(奥歯)より小さいこともヒトの特徴で、前年にケニアで発見された600万年前の人類オロリン・トゥゲネンシスの大腿骨の形状なども、直立していた可能性を示しています。