暗号資産市場を規定する「FIT21」がもたらす意図せぬ結果──超党派の支持を集め、米下院を通過
市場の国際性を過小評価
FIT21はさらに、暗号資産市場の国際性も過小評価している。暗号資産はグローバルな資産であり、世界中で同じ商品として取引されている。 米国内で特定の資産を制限しようとすれば、規制のアービトラージ(厳しい規制を逃れて、規制の緩やかな別の管轄権に移動すること)につながる可能性が高く、国際市場から逆流して来る資産が法案の意図を損なう一方で、米国の暗号資産業界の競争力を低下させることになる。 米国外の開発者や投資家が、米国で制限されたデジタル資産に同様の制限を独自に課す可能性は低い。したがって、新しいプロジェクトや投資家には、これらの要件を回避するために、開発や投資を米国外に移すインセンティブが働くだろう。 このため、米国で「発行」されていれば制限されたデジタル資産となっていたはずの非米国産トークンが、米国の暗号資産市場に氾濫するのを防ぐことは極めて難しくなる。
消費者に有害となる可能性
最後に、皮肉なことに、米国の消費者を保護するために作られた法案が、市場構造の不備により、消費者に害を及ぼすことになりかねない。CFTCが規制するエンドユーザー向け市場は、一般的にトークンをタダで受け取った売り手で溢れることになるだろう。このアンバランスな市場ダイナミズムによって、制限された市場と国際市場の両方を比較すると価格の低迷とボラティリティの上昇を招く可能性は高く、プロの裁定取引トレーダーが米国の個人投資家の犠牲の上に利益を得るだろう。 このシステムは、中央集権型と非中央集権型という分類の間での移行に起因する、バラバラな価格設定と価格の急騰の断絶を利用して裁定取引を行うインサイダーやプロの投資家によって、さらにつけ込まれることになる。 米国のリテール市場は、せいぜい基本的な価値を知らせるノイズの多いシグナルとなり、エンドユーザーが機関投資家の流動性を受け取るのは最後になるだろう。 FIT21は暗号資産がもたらす規制上の課題に対処するための重要な一歩ではあるが、現在提案されている市場構造は意図しない結果をもたらす可能性がある。顧客を保護し、米国の暗号資産市場が十分に機能するようにするため、議員は法案を改良し、首尾一貫した規制のフレームワークの中で、証券とはみなされない代替可能な暗号資産の現物市場を統一しなければならない。 |翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸|画像:Andy Feliciotti/Unsplash(CoinDeskが加工)|原文:The Unintended Consequences of FIT21’s Crypto Market Structure Bill
CoinDesk Japan 編集部