世界販売100万台増の大風呂敷! 日産の新経営計画「The Arc」がはらむ夢と課題
「The Arc」の前提にある日産の長期計画
さる2024年3月25日、日産が「The Arc」と銘打った中期経営計画を発表しました。これは2023年11月に予定されていたお披露目を4カ月ほど後ろ倒しにしたものです。理由は事業環境の急激な変化に対応するための見直しに時間を要したこと。後述する海外市場や、電気自動車(EV)シフトの変容を織り込む必要があったということです。 【写真】成長の第1歩はこのクルマの成功にかかってる!? 新型日産キックスの内装・外装を見る(8枚) この手の記者会見の常で、開催時程は株式市場のクローズ後、そして日程は直前にならないと知らされないため、われら“ピン芸人”はタイミングが合わないと参加がなかなかかないません。今回もロケ帰りのパーキングエリアで、YouTubeを介してのリモート視聴となりました。こういう時代になってくると、メルセデス・ベンツの新型「Eクラス」が車内Zoomに対応するカメラの装備をウリにするのもわからんでもない気がしてきます。 さて、今回の中期経営計画を理解するうえで押さえておかなければならないのは、その前提となっている長期の経営計画、すなわち2021年に発表された長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」です。その概要はといえば……。 ●2026年度末までに約2兆円を投資し、電動化を加速 ●2030年度までに電気自動車15車種を含む23車種の新型電動車を投入し、グローバルでの電動車のモデルミックスを50%以上へ拡大 ●全固体電池を2028年度に市場投入 と、以上は日産の公式発表でアナウンスされているもの。ふんわりしたものにみえるかもしれませんが、クルマの商売はパワートレインのみならず、先進運転支援システム(ADAS)や車載OSを巻き込んでのユーザーエクスペリエンス領域も熾烈(しれつ)な開発競争に突入しています。ここにASEANやアフリカなど新興市場の発展に歩を合わせた商品展開といった要素も織り込むと、10年先を見通すことは非常に難しいわけです。で、このアンビションに向かう第一歩の中期経営……というよりも、構造改革計画として2020~2023年度に設定されていたのが「Nissan NEXT」でした。