リアルとバーチャルの間をどう埋める? ロボットのコントロールに応用されるアニメーション技術
いまやアニメーション技術として、バーチャルの3Dキャラクターを動かす例は珍しくなくなった。その一方、ロボットなどの物理的な機械を動かす際にアニメーション技術が活用されていることに触れられる機会は、あまりないように思われる。本稿では、それらの事例とともに、エンタメ作品以外へのアニメーション技術活用について記していく。 【画像】地面に横たわった状態から、人間には絶対できない起き上がり方をするAtlus 自立歩行ロボットなどで注目を集め続けているボストン・ダイナミクスは4月17日、同社の『Atlus』を油圧式から電動での開発に切り替えたと発表した。それとともに公開された映像からは、Atlusの滑らかでありつつも、人間には不可能な動作が見て取れる。 人型でありながら、人と異なる可動域を持つ。その理由としてボストン・ダイナミクスは、人間が動作可能な範囲に限定されず、効率的に動けるように設計していることを挙げている。さらに、同ロボットにはAIや機械学習に関するツールが内蔵されており、あらゆる環境下への適応を目指すという。 これまでの油圧式であると、事故の際に燃料が漏れてしまうなどの危険性があった。特に人型であると、どうしても漏れた際の生々しさや痛々しさまで付加されてしまいやすい。その意味でも電動化による安全性が期待されることになるだろう。 現在、ボストン・ダイナミクスの筆頭株主は韓国のヒュンダイグループであるが、その前はソフトバンクグループだった。福岡ソフトバンクホークスの応援団にもなった『Pepper』が、コロナ禍で無観客の中、ボストン・ダイナミクスが開発したロボット『Spot』とともにスタンドで一糸乱れぬダンスを披露していたのを覚えている人もいるかと思う。Spotは筆頭株主がヒュンダイグループとなった際に、韓国のアイドルグループ・BTSとコラボしたことでも話題になっている。 ボストン・ダイナミクスはSpotをコントロールするために、「Choreographer」というソフトウェアを開発した一方、より複雑な動きを再現すべく、オートデスクの3D制作ソフト・Mayaも併用していた。 Mayaといえば、一般的には実写やアニメなど、数多くの映像作品で使用されているイメージを持つ人が多いだろう。ロボットの動きをコントロールするためにも使用されている例を意外に思う人もいるかもしれない。しかし、ロトスコープやモーションキャプチャーといった、リアルの動きをトレースするインプットとは逆に、バーチャルの動きをリアルにアウトプットさせる際には、こうした3Dモデルソフトが適している。 この話を理解するには、まずMaya内で『Spot』の3Dモデルを作成して、アニメーションを制作。そこからアニメーションのデーターーSpotの各パーツがどう動くかの数値などを、Spotの実機でも使用できるようにしていると考えると分かりやすいかもしれない。またロボットに限らず、自動車などの様々なモビリティーも、実機の前に3Dモデルを作成してイメージしやすくしている。 さらにインタラクティブ要素のあるデバイスにまで範囲を広げてみるとどうだろう。ユーザーがプレイしているゲームやVRなどのコントローラーを介したリアルタイムの挙動に、あらかじめインプットされているアニメーションのデータが連動するといった感じになる。 クレーンゲームをオンラインでプレイする。重機をリモートでコントロールして人間では危険な作業を行う。3Dソフトまで使用されているかどうかは別として、あらゆる場面で身近になっているものにアニメーションの技術が応用されているのではないかと思うと、世の中に対する解像度が上がり、見え方も変わってくるに違いない。 〈参考〉 ・An Electric New Era for Atlas https://bostondynamics.com/blog/electric-new-era-for-atlas/ ・All New Atlas | Boston Dynamics https://www.youtube.com/watch?v=29ECwExc-_M ・In Step with Spot https://bostondynamics.com/blog/in-step-with-spot/ ・Spotted: Boston Dynamics robot at the Autodesk Technology Centers https://adsknews.autodesk.com/en/stories/spot-robot-autodesk-technology-centers/ ・【初公開】JR 西日本 × 日本信号 × 人機一体 による「人機プラットフォーム」の開発成果としての実用レベル試作機を、2022 国際ロボット展にて初公開しました https://www.jinki.jp/news/2022031601
真狩祐志