日銀利上げ、農業への影響は? 資材高緩和の一方、マイナス面も…
日銀による追加利上げで、8月から政策金利(無担保コール翌日物レート)が0・25%に引き上がった。円相場の急騰や株価の急落など、早くも経済に影響が出始めている中、農業にはどんな影響が生じる可能性があるか。本紙「農家の特報班」が探った。 日銀による利上げに伴い、金融機関は企業に資金を貸し出す際の金利を引き上げる。企業はまとまった資金が借りにくくなり、経済は減速する。 そうした動きは農業にどう影響するか。記者は、農業投資・農業金融に詳しい農林中金総合研究所の高山航希主任研究員を訪ね、見解を求めると「どちらかというとプラス効果の方が大きいとみている」との回答を得た。 農業への追い風の一つに高山氏は「利上げによる円高の進行」を挙げる。「資材高が和らぎ、多くの農家の負担軽減につながる可能性がある」と考える。 規模の大小を問わず多くの農家は今、肥料や農薬、燃料、家畜飼料など、資材価格の高騰に苦しんでいる。これらの原料の多くは輸入原料に依存しており、円安によって価格が高騰している。 円安の要因となっているのが政策金利だ。国によって金利水準は異なり、米国は現在5・25~5・50%。投資家は金利の高い国に預金する傾向があり、他国との金利差が円安の一因になっていた。長く金利を抑えていた日本の追加利上げだけに、高山氏は「市場の期待感は高い。かなり円高が進むのではないか」と予測する。
「影響は比較的小さい」
農家の資金借り入れについて、高山氏は「担い手農家が受ける影響は比較的小さい」とみる。担い手農家向けの日本政策金融公庫の「スーパーL資金」、JAバンクの「農業近代化資金」など、政策で金利を低くしている資金は、金利上昇の影響を受けないからだ。 ただ、担い手農家の規模拡大は「歯止めがかかる可能性がある」という。政策資金は借入額に上限があり、別に資金を借り入れる際は一般企業と同じく上がった金利が「経営の重しになる」という。 一方、小規模農家の資金借り入れには、マイナスの影響が生じることがあるという。担い手農家と違って低利の融資を受けにくく、「利子の支払いが負担になる」(高山氏)。 高齢農家の営農継続にも影響を与える可能性がある。高山氏は「資材高の緩和は営農継続の好材料」とした上で、預金で得られる利息が増えることで、「農業に力を入れるより国債や預金に資金を振り分けた方がもうかると判断する人が一定数出るだろう」とみる。 一連の見通しについて、高山氏は「一般的に利上げで生じるといわれる経済の動きを基にした分析」と説明。現在の金利は16年ぶりの水準となるため、「実際にどのような影響が生じるかは未知の部分も大きい」と話す。(金子祥也)
日本農業新聞