韓国・仁川に誕生した巨大エンターテインメント・リゾート「インスパイア」に行ってみた
2024年3月、韓国で3番目の人口を誇る韓国・仁川に、統合型エンターテインメント・リゾート「インスパイア・エンターテインメント・リゾート」がグランドオープンした。アジアを代表するハブ空港に近い場所に生まれた広大な施設をリポートする。 【写真を見る】韓国の大型リゾート、最新の姿とは?
アジアのリゾートが進化している
早朝の成田空港からアシアナ航空の直行便で約2時間半のフライト。到着地の韓国・仁川国際空港には若いアジア人の女性グループが多くいて、昨今の東京・新大久保を想起させる。 空港からタクシーに乗ってホテルまで向かった。ところどころにビルや高い建物を見かけるものの、市街地もなく平坦な道が続く。道すがら、巨大な「インスパイア」が突如、姿を現した。ラスベガスのような唐突感。驚いていると、ホテルに到着した。たった10分ほどの距離だった。 「インスパイア・エンターテインメント・リゾート」の敷地面積は46万平方メートル強と数字で見ても広大だ。空港に近いことから12階建てと低層の設計のため、横に広い。ホテルの客室数は1275室。そこに1万5000席の「インスパイアアリーナ」と呼ばれる多目的ホール、コンベンション施設、外国人専用カジノ、スパ、ショッピング・ダイニング施設、全天候型プールドームやデジタルアート空間などを備える。遠目でもその全貌をとらえることが難しい規模だ。 回転ドアを通ってエントランスホールに足を踏み入れると、ひらけた空間にそびえ立つシンボリックなムードライトが目に飛び込んでくる。エントランス全体はゴールドを基調に、遊び心のあるライティングを施した華やかなつくりで、エンターテインメントの世界に踏み込んだのだと期待感が高まる。 ホテルは、それぞれ異なるデザインコンセプトのフォレストタワー、サンタワー、オーシャンタワーの3棟からなっていて、客室は、スタンダード、スイート、ヴィラの3種類がある。今回筆者は、サンタワーの11階にある「サンスイート」に宿泊した。88平米の室内は、ダイニング、リビングスペースとベッドルームがゆとりをもってレイアウトされていて、バスルームには、シャワーブースのほかに深めのバスタブもある。取材時のルーム・レートは、大人2人、子ども2人までで一泊、約9万円(1ウォン=0.11円※編集部調べ)。気兼ねなく宿泊できる価格帯が魅力だ。 館内の1階と2階には約90店舗のショップとレストランが並ぶ。韓国発のストリートブランド「acme de la vie」や雑貨店「Butter」、コンビニチェーン「CU」、ドラッグストア「オリーブヤング」など、韓国観光で人気のショップが多く、たいていの土産選びはここで完結できる。 カジュアルフレンチを提供する「ブラッセリー1783」。インテリアは、1783年6月4日に世界で初めて熱気球飛行を成功させたフランスのモンゴルフィエ兄弟から着想を得ている。 ダイニングは、韓国料理はもちろん、中国料理、日本料理、海外初出店の「マイケル・ジョーダン・ステーキハウス」やヴィーガン料理も提供する「ガーデン・ファーム・カフェ」など、こちらも多彩で、長期滞在でも飽きることがないだろう。 最新のテクノロジーとクリエイティブを融合した館内には、多くのアートやオブジェが点在している。なかでも見事なのは、施設2階の南エントランスからアリーナ前まで続くデジタルエンタテインメントストリート「オーロラ」だ。超高画質LEDが全長150mの回廊を覆うように設置されていて、奥行きのあるリアルな森や空の映像が投影されている。 30分ごとに3分間上映する「アンダー・ザ・ブルー・ランド・ショー」は、海の中にいるような没入感を味わえる神秘的なショーだ。映像がはじまると、廊下を歩く誰もが足を止めて天井の美しい映像に見入っていた。 今回、筆者が気になっていたのは、2024年2月にオープンした「インスパイア・カジノ」だ。この施設は韓国最大のゲーミング施設で、約150卓のゲームテーブルと約390台のスロットマシン、160席の最新型ETGスタジアムを備える。取材当時、ミニマムベットはスロットマシンで500KRW(約56円、価格変動の可能性あり)。ハイリミットエリアや3階のVIPフロアでは高額ベットも見受けられた。 入口付近のスロットマシンは7割程度が埋まっていた。対して、テーブルゲームは半分程度しかオープンしておらず、平日は混雑しているわけではないようだ。 施設内には、オリジナル高級広東料理レストラン「インスパイア・パビリオン」など3つのダイニングもある。カジノ施設と同じく24時間営業なので、インスパイア内のレストラン閉店後でも食事をすることができる。ただし、カジノ施設は外国人観光客専用なのでエントリーにはパスポート提示が必須だ。 館内には、全天候型の多目的屋内プール「スプラッシュ・ベイ」もある。施設内のバーでは軽食程度の食事ができるし、複数あるウォーターアクティビティは小さい子どもも楽しめる。天井は大きなガラスドーム型になっていて、採光がいい。夜は赤やピンクの照明を灯した昼とは異なる印象の空間になる。 さらにインスパイアには、スパに加え、宿泊者専用の米製「マトリックス」の器具を揃えたフィットネスセンターとサウナ付き屋内プールも併設されていて、リラクゼーションとしても利用できる。 「V SPA」で体験した90分の全身マッサージは、オールハンドでやや強めだったが、「つよく」「やさしく」など簡単な日本語ならセラピストに通じる。スパでは、マッサージのほか、むくみとり、フェイスやボディのトリートメントも選ぶことができる。 1泊2日の滞在では紹介しきれないほど要素が盛り沢山のインスパイアだが、じつはまだ未完成。2024年第2四半期に、屋外体験型エンタテイメントパーク「ディスカバリーパーク」や1000席を超える大規模フードコート、韓国最大のデジタルアート展示館、屋内キッズプレイグラウンドなどが順次オープンを予定している。さらにインスパイアアリーナでは、国際的なスポーツ大会やファッションショー、世界的なアーティストを招いたライブイベントなどを開催する予定だ。 リージョナル・マーケティング・マネージャーの茂木文華(もぎ・あやか)は、「国籍や年齢を問わず、すべてのお客様が今までに経験したことのない体験と感動を味わい、“インスパイア”されるデスティネーションを目指しています」と話す。 仁川国際空港はハブ空港として、世界からアクセスも容易だ。壮大なスケール、多彩な施設と、訪れる人々に興奮と刺激的な体験を提供するインスパイアは、韓国におけるエンターテインメント・リゾートのひとつの答えかもしれない。ビーチもないし、風光明媚な景色もない。それでも人を集めるにはなにが必要か──アジアにおけるリゾートの在り方を考えさせられた。 ■INSPIRE KOREA 住所:127, Gonghangmunhwa-ro, Jung-gu, Incheon, Republic of Korea 22382 TEL:032-580-9000(代表) URL:https://www.inspirekorea.com/
文・松村亜希 編集・岩田桂視(GQ)