「ダウンタウンには普遍性がある」“平成の視聴率キング”が語る、松本人志が「笑いの天才」たる理由
---------- 昨年12月、『週刊文春』が、ダウンタウン・松本人志氏の性加害疑惑を報道した。そして今年1月8日、吉本興業は松本氏の活動休止を発表した。デビューから40年以上を経ても、数多くのレギュラー番組を抱え、多くの芸人から尊敬されていた彼は、なぜお笑い界の「現人神 」となることができたのか。彼が「天才」と評価される理由はどこにあるのか。『クイズ世界はSHOW by ショーバイ 』『エンタの神様』など、数々の番組を高視聴率に導いた五味一男氏がその理由を明かす。 ---------- 【ランキング】「スタジオで嫌われているMC」不名誉の1位となった、超人気者の名前 ※『松本人志は日本の笑いをどう変えたのか』(宝島社)から一部抜粋してお届けします。
クリエイターでありヒットメーカー
まず大前提として、私のスタンスは松本人志のファンであるということです。 その上で、個人的な思いも含め松本さんについて語りたいと思います。 ビジネスの世界では、クリエイターとヒットメーカーはなかなか両立しないと言われています。クリエイターは自分の感覚が命。運良くその感覚が時代を射抜いているうちはよいのですが、少しでもその感覚が時代の求めるものとズレるとヒットは望めません。 そのため私は、「視聴率はテレビマンがどんなに欲しくても、自分自身で取りにいけるものではなく、最終的にお客さん(視聴者)が決めるもの」「自分がやりたいことを優先させるのではなく、人々が潜在的かつ普遍的に求めているものを彼らの代弁者となり見つけ出し具現化する」といったロジックを掲げ、数々のテレビ番組を手掛けてきました。 なので、今回私が「松本人志」を語るのはちょっと違うんじゃないかととらえる人は多いかもしれません。たしかに私が「客観的にヒットを計算するタイプ」に対して、松本さんは「自らの笑いをとことん追求するクリエイタータイプ」だというのはその通りかもしれません。 ただ、ヒットメーカーとクリエイターはまったく異なるものではないとも思えるのです。複数の当たりを生み出すヒットメーカーは、視聴者が潜在的に求めていることを察知する力が必要だと言われています。 でも、松本さんはそんな理屈など超越して『笑ってはいけない』シリーズ(日本テレビ)、『人志松本のすべらない話』『IPPONグランプリ』(ともにフジテレビ)といった大人気コンテンツを生み出した天才的ヒットメーカーでもあるのです。 私と松本さんは一見、相容れないように思われるかもしれませんが、少なくとも私はクリエイターでありながらヒットメーカーでもある松本さんに対して大いなるリスペクトを感じている「視聴者として一人のファン」なんですね。