ヤクルト・西川遥輝は気配りの男 プレー以外でも見せるチームへの献身
【武田千怜のアナザーストーリー】ふと見ると、隣にはよく若い選手がいる。ヤクルト・西川遥輝外野手(32)のことである。ある日の試合前はスタメンに抜擢された若手と談笑。またあるときは、チャンスで凡退した若手のそばに座っていた。「僕らの世代が若手がやりやすい環境をつくってあげるのが一番」との信念を持つ兄貴分の心遣いだ。 【写真】ヤクルト・西川遥輝、少年時代好きだった球団は「ジャイアンツです。あっ…」 4月5日の阪神戦(神宮)。プロ初スタメンに名を連ね、初安打と初盗塁を記録した岩田幸宏外野手(26)は、試合後に「緊迫した展開となり、回を追うごとに緊張したけど、遥輝さんが横で声をかけてくれて、だいぶ楽になった」とコメントしている。同戦は岩田が中堅、西川が右翼で先発出場。「僕が緊張しているから、試合前も試合中も会話をしてくれた。たわいもない話だったのですが、救われました」と明かした。 14日に行われたDeNA戦(横浜)の試合前練習では、自身のフリー打撃が終わってからも、ベンチに残り、岩田の打撃を見守る西川の姿があった。岩田は「僕が質問したら、打撃まで見て、応えてくれました」。通算1338安打の14年目は、貪欲な若手に惜しみなく助言を送る。 20日のDeNA戦(神宮)では、赤羽由紘内野手(23)の心をフォローした。「2番・右翼」で先発出場した赤羽は、二回2死満塁の好機で三ゴロに倒れ、表情が暗くなっていた。西川は結果に一喜一憂する育成出身4年目の隣に寄り添い、声をかけた。 「もうその打席は終わっているし、次の打席でどうするか、そのことだけを考えよう」 赤羽は「遥輝さんはポジティブなことをいってくれる。めちゃくちゃありがたいです」と感謝。次の打席を迎えた五回には、右前打を放った。 西川は智弁和歌山高から2011年にドラフト2位で日本ハムに入団。盗塁王4度、外野手でゴールデン・グラブ賞4度、ベストナイン2度の実績を誇る一方で、2軍生活や戦力外も経験した。今季で14年目のプロ野球人生で、天国も地獄も味わった。だからこそ、若手に伝えたい言葉が自然と脳裏に浮かぶのだろう。楽天を経てヤクルトが3球団目の苦労人には、若手と接する上で大切にすることがある。 「自分が経験して、しんどいときになんて声をかけられたら、助かるのかっていうのは、考えています。泣きそうな人間に泣くなよって言ったら、泣くじゃないですか。そうならないように、ひも解いてあげないと。試合は流れているから、次に向けてね」
チームは投打の歯車がかみあわず、低空飛行が続くが、常にチームの勝利を願い、若手を献身的に支える男がいる。(サンケイスポーツ・ヤクルト担当)