中国東部で1万年前の米ビール醸造の証拠を発見
【東方新報】東アジア最古の米ビールに関する新たな証拠が、中国で発見された。 中国科学院によると、中国東部の浙江省(Zhejiang)の上山跡で、1万年前の発酵技術の痕跡が発見され、醸造に関わる生態系、文化、初期の農業との相互関係が明らかになった。 この研究結果は10日の学術誌「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)」に掲載された。 研究結果によると、稲作の初期段階において、上山古代集落では多様な生存戦略を採用していたが、その中には主に糖化剤として紅麹カビを用いて、陶器、特に口細型の陶器を使って米ビールを醸造していたことも明らかになった。 この醸造技術は、最終氷期が終わった約1万年前から現代までの「完新世」の初期の温暖で湿度の高い気候と密接に関連していた。 栽培植物化された米は発酵のための安定した資源となり、好適な気候条件は菌類の成長を促し、アルコール発酵技術の発展を促進したと推測される。 研究者たちは、アルコール飲料はおそらく儀式的な宴席において重要な役割を果たし、社交や神々とのコミュニケーションの媒体となっていたと見ている。米ビールが持つ独特な文化的意義は、新石器時代の中国における米の栽培、利用、普及の原動力となったのかもしれない。 発酵、貯蔵、調理に使用された容器を代表する12個の陶器の破片を分析したところ、研究者らは栽培植物化された米から生じる高濃度の非結晶含水珪酸体「フィトライト」が検出された。これは、上山集落の古代人たちにとって米が重要な植物資源であったことを示している。 さらに、米の殻や葉が陶器の生産に使用されていたことも判明し、上山文化において米が主要な生計の糧だったことが明らかになった。 また、陶器の破片には、米、ハト麦、ドングリなど、さまざまな植物のデンプン粒が含まれていた。多くのデンプン粒は酵素の加水分解と糊化の兆候を示しており、発酵プロセスがあったことを示唆した。 さらに、研究者たちは、紅麹カビなどの菌類や酵母細胞が大量に存在していることを確認し、その一部は成長と発育段階の典型的な兆候を示していた。 これらの菌類は、伝統的な中国の醸造法と非常に近い関係にあり、紅麹カビは「紅麹米ビール」の製造の主要成分である。 古代上山文化における米ビール醸造の証拠は、東アジアの農業の起源と初期の食習慣の形成について新たな視点を提供するもので、米の栽培植物化、技術進化、農業と醸造の世界的歴史に関するギャップを埋める上で極めて重要な価値を持っている。 専門家は「今回の発見は、初期の米ビール製造の複雑性と革新性を明らかにし、東アジアにおける稲作農業、初期の社会構造、技術の普及の起源を探る上で重要な科学的証拠を提供している」と高く評価している。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。