「川勝知事はあえて失言した」といえるワケ、後任にリニア工事の許可を託したか…実は水資源の諸問題はほぼ解決済み
■ 2025年度中にも後任の知事が許可? リニア中央新幹線が静岡県内を通る10.7kmの建設工事の認可は、新しい知事によって遅くとも2025年度中には認可されると筆者は予想する。なぜ認めるのかとよく問われるが、逆に建設工事を認めない合理的な理由を見いだせないからだ。 それではリニア中央新幹線の品川駅と名古屋駅との間はいつ開業するのか。これは静岡県内の区間が未着工である限り、不明としか言いようがない。 延長285.6kmのリニア中央新幹線のうち、トンネルは256.6kmとほぼ9割を占める。開業の鍵を握るのもまさしくこれらトンネル群で、なかでも長さ10kmを超える長大なトンネルの完成時期を左右すると言ってよい。 JR東海は多くのトンネルで建設工事の状況を公表しているが、特に山岳を通り抜けるトンネルで進捗状況をとらえるのはなかなか困難だ。一般に山岳トンネルというと、本坑といって列車が通過する大断面のトンネルの掘削が最も難しいように思われるのだが、実はそうではない。 先進導坑といって、本坑を掘るに当たって地下水の湧出や地質の調査といった役割を担う小断面のトンネルの建設工事のほうがはるかに難しいからだ。本坑の掘削がなかなか進まないと苛立つ向きもあるが、注目すべきは先進導坑の進捗状況で、こちらさえ完成すれば、本坑の完成は大まかに言ってその約2年後、開業を迎えられるようになるのはそのまた約1年後となる。 という次第で山岳トンネルの建設状況から完成時期を推測することは不可能に近い。JR東海が各トンネルの具体的な進捗状況を示してくれない限り、判断できないからである。
■ 「第一首都圏トンネル北品川工区」を検証 一方で回転する刃が先端に取り付けられたシールドマシンという円形の機械でトンネルの全断面を掘削する地下トンネルの進捗状況は比較的把握しやすい。掘削距離を完成した距離と見なしてほぼ差し支えないからだ。実際には掘削完了後、線路を敷設するほか、電気工事などの仕上げを行う。掘削後から1年で開業は少々せわしいが不可能ではない。2年あれば余裕があると言ってよいだろう。 リニア中央新幹線品川―名古屋間の完成時期を占う建設工事場所は実は起点の品川駅のすぐ近くにある。第一首都圏トンネル(延長36.924km)の最も品川駅寄りにある北品川工区だ。北品川工区は品川駅から約1.0kmのところにある北品川非常口を経て神奈川県川崎市中原区にある等々力非常口までの約9.2kmの工事場所である。 途中、北品川非常口から約4.7km、等々力非常口から約3.5kmの地点に東雪谷非常口(東京都大田区)が設けられており、北品川工区では2機のシールドマシンを使用してトンネルを掘削していく。2基の具体的な担当場所は、北品川非常口から品川駅までの約1.0km、北品川非常口から等々力非常口までの約8.2kmである。 いま挙げた2基のうち、北品川非常口から等々力非常口まで掘削を始めたシールドマシンは約124m掘り進んだところで止まったままだ。シールドマシンの設備を収める鋼製の筒の一部がカーブの区間で変形したため、修復と再発防止策を立てるために停止させたのだという。JR東海によると2024年春に再開となるというが、いまのところ発表されていない。 注:その後、JR東海が2024年4月30日に公表した「第一首都圏トンネル(北品川工区) シールド掘進工事(調査掘進)の進捗状況」によると、いま挙げたシールドマシンは4月8日に掘削を再開し、4月26日時点で北品川非常口から約130mの地点に達したという。