Reol「逃げ場だった音楽が居場所となった」10年の軌跡を凝縮「Reol Oneman Live “No title”in BUDOKAN」
Reol(れをる)が初めてのアルバム『No title』をリリースしてちょうど10年を迎えた2024年8月17日に、初の日本武道館でのワンマンライブ「Reol Oneman Live “No title” in BUDOKAN」を開催した。活動10周年記念のライブであると同時に、『No title』のときはまだライブ活動をしていなかったこともあり、今回が10年越しのリリースパーティにもなった。ニコニコ動画やYouTube等の動画投稿サイトで活動をしていた当初から、現在に至るまで色々な場面でReolに出逢った観客が集った会場は満員御礼。「逃げ場だった音楽が居場所となった」という10年の軌跡を凝縮した、祝祭的で特別な一夜となった。 【全ての写真】Reolが10年の軌跡を凝縮した日本武道館公演(全32枚) 毎回趣向を凝らした演出で、楽曲の世界を色鮮やかに拡張し、初めてライブを観る人も、何度もライブに足を運んでいる人にも鮮度の高いエンターテインメントなステージで魅せるReol。初の武道館はまさにその集大成。会場へ入ると、メインステージからアリーナ中央の八角形ステージへと花道が伸びており、その八角形ステージは天井から幕で覆われている。あそこには何があるんだろう、という観客のソワソワとした期待感が会場に満ちている。 客電が落ち、イントロダクションとして『No title』収録の「-Ending-」のファンタジックなオルゴールの音色が響きわたり、続いて「極彩色」のエレクトリックなイントロがスタート。Reolはどこだ!?と思ったのも束の間、八角形ステージの幕が落ちて和洋折衷な真っ白な衣装に身を包んだReolがフライングで登場してステージに舞い降りた。その登場に観客のボルテージがマックスとなったのはいうまでもなく、さらに扇子を扇ぎながら真っ直ぐに伸びるハイトーンを聴かせるとぐんぐんと会場の熱気が増していく。ドラムとベース編成のバンドとエレクトロが痺れるようなファットなビートを生み出していくのが気持ちいい。 歌い手でありラッパーのnqrseをフィーチャリングした「オオエドランヴ」では、ダンサーが登場し一段と華やかな祭の乱舞へ。早くもクライマックスのムードだが、さらに「insider」「宵々古今」を連投して、観客のシンガロングやコールを巻き起こしながら興奮のメーターを振り切っていった。 大きなReolコールが起こるなか早くも青色のドレスに衣装替えし「Welcome to”No title”at BUDOKAN!」と晴れやかに挨拶をしたReolは、「今日に至るまでたくさん10周年をお祝いしてもらっているので、今日は私が、君の人生を祝いたいとステージに立っています」と宣言して、「最高のライブを更新しにきました」とここからもフルスロットルで飛ばしていく。白いレスポールをかき鳴らしソリッドな3ピースで聴かせる「生命線」や、「第六感」ではステージ背面の映像に巨大なMIKEY(東京ゲゲゲイ)が映し出され、3D的な迫力で観客を驚かす。また10月スタートのTVアニメ『青の祓魔師 雪ノ果篇』のオープニングテーマに決定した新曲「RE RESCUE」が披露された。ここからの定番のライブチューンになっていきそうな感触だ。 会場に響く拍手喝采に包まれながら「活動をはじめたときは、こんな10年後が待っているとは思っていませんでした」と言い、「今日のことも、10年後に振り返ったとき最高の思い出になっているとすでに感じています」と続け胸いっぱいという表情で会場を見渡す。そしてここからの中盤戦は、4人のストリングス奏者を交えて「1LDK」「Echo」「白夜」の3曲を披露した。弦楽器が加わって新たな装いとなったサウンドに、Reolの透明感のあるボーカルが冴え、とくにエレクトロサウンドと重厚な弦楽器の音色とのアンサンブルが美しい「Echo」では甘さを帯びたジェントルなボーカルが一層引き立った。 “REOL Σ Mushuppppp“と題し映像とアッパーなリミックスのコーナーを経て折り返した後半戦は、キッチュでRPG的な映像がかわいい「コノヨloading…」や「ギミアブレスタッナウ」でポップで刺激的なラップで観客を沸かせ、『No title』収録の「drop pop candy」や「ヒビカセ」で大きなシンガロングを巻き起こした。会場を揺るがすような観客のコールが轟いた「劣等上等」など、このブロックでは初期の曲たちがいかに多くの聴き手に愛され、Reolのライブが形作られてきたかを再確認するようなステージとなった。 元々、サウンドクリエイターのGiga、映像クリエイターのお菊、イラストレーターの望月けいと四者で自主制作をした2014年のアルバム『No title』。ソロ・アーティストReolとして活動をしている現在も、それぞれとの関係は続いており、Gigaとお菊は度々ライブに映像(キャラクター)で登場してゆる~いMCで盛り上げてくれるが、この武道館公演でも久々に登場。Reolは、Gigaとお菊、また序盤のゲストとなったnqrseやMIKEYを改めて紹介して、「10年前に出会った人たちが、武道館でライブをするよと言ったら力を貸してくれるってすごいことですよね」と語る。そしてそんな確かな活動をしてきた10年を軽々と背負うようにして、「Boy」「DDD」とダイナミックなパフォーマンスで再び武道館を丸ごと熱していった。 スピード感満点のハイパーチューン「感情御中」で駆け抜けたあと、再び真っ白な衣装に身を包んでエッジーなダンスチューン「たい」で観客を踊らせる。そして迎えた「金字塔」からの「煽げや尊し」は、もはやテッパンと言える盛り上がりだ。アッパーなサウンドと会場の興奮と熱気が衝突して最高潮のハレの空間が生まれ、武道館は歌えや踊れの賑わいとなった。 「今日が来るまでの1週間はハラハラしました」と語ったReol。客席を見ながら「今日来れなかった人がいたり、大変な思いをしてきた人も知っています。でも今は本当に最高な気持ちです、ありがとう」と告げ、そして最後の曲を紹介する。「この曲を作ったときは、自分の音楽や歌には、代わりがいるんじゃないかと思っていた」とネガティヴな思考があったことを話し、「人生がどん底のときは、ネットや音楽に逃げ込んでいたけれど、10年経って逃げ場だった音楽が、インターネットを通じていろんなところに届いてくれて、居場所になってくれた。私の音楽を選んでくれて、本当に本当にありがとうございます」と言って、「No title」を歌った。孤独のなか、ネットを通じて音楽に触れてくれた人たちの想いも昇華するように、また10年前の自分自身をも救い出すような伸びやかさで、ここ武道館で響く「No title」は格別に繊細でいて、力強い。アリーナにシャボン玉が舞うなかでのエンディングは、儚くもとても美しい瞬間だった。 アンコールでは、作編曲にGiga、イラストレーションに望月けい、MVのディレクション及びアートワーク制作にお菊を迎えた新曲「ディア」がいち早く披露された。グルーヴィなダンスチューンで、映像に映るキャラクターは今目の前にいるReolと同じ衣装であることにも歓声が湧く。さらに『No title』収録のアグレッシヴなロックチューン「ギガンティックO.T.N」では、ニーハイブーツを脱ぎ捨ててメインステージから花道、八角形ステージなど、ステージ中を裸足で駆け回り歌う。小柄な体のどこにそんなエネルギーがあるの?と思う全力疾走ぶりで、紙吹雪や金テープが舞う会場のなかで、Reolの姿は何よりも輝いていた。最後の最後まで最高のライブを更新し続け、8月17日はReolにとって観客にとってさらに記念碑的な日となった。またアンコールでは、2025年11月9日に横浜アリーナでライブを開催することが発表された。少し先のことになるが、この間にも更なるパワーアップを遂げるのはまちがいない。この武道館公演は、その確実な布石にもなった。 Text:吉羽さおり <公演情報> 『Reol Oneman Live「No title」』 2024年8月17日(土) 東京・日本武道館 【セットリスト】 -Ending- 01. 極彩色 02. オオエドランヴ 03. insider 04. 宵々古今 05. 生命線 06. アシンメトリー 07. 第六感 08. サイサキ 09. RE RESCUE 10. 1LDK 11. Echo 12. 白夜 13. REOL Σ_Mushupppppコーナー -BWW SCREAM- ~ちるちる ~サマーホラーパーティ ~神様になった日 ~DetaramE KiddinG ~VIP KID ~エンドレスライン ~ニュータイプトーキョー ~コノヨ Loading... ~ギミアブレスタッナウ 14. B12 15. drop pop candy 16. ヒビカセ 17. 劣等上等 18. Boy 19. DDD 20. 感情御中 - WANT U LUV IT- 21. -ムーブのための試奏曲 Nr.4- 22. たい 23. 金字塔 24. 煽げや尊し 25. No title EN1. ディア EN2. ギガンティックO.T.N -Opening-(エンドロールクレジット) <リリース情報> デジタル・シングル 「ディア」 配信中 <ライブ情報> 『Reol Oneman Live「タイトル未定」』 2025年11月9日(日) 神奈川・横浜アリーナ 開場17:00 / 開演18:00