災害時これで大丈夫?…要支援者を対象した個別避難計画、姶良市は作成率0.1%未満 市「十分な体勢取れていなかった」
鹿児島県姶良市で、災害時に自力で避難できない障害者や高齢者らの「個別避難計画」の作成が遅れている。作成が市町村の努力義務となって3年半。4月時点の作成率は県内で最も低く、障害者の家族から不安の声が上がっている。市は態勢を強化し作成を進める考えだ。 【写真】姶良市の場所を地図で確認
県や国などによると、4月1日現在、県内の要支援者は約6万8000人で、計画作成済みは約1万5000人。作成率は22%だ。県内市町村別では、「20%以下」が最も多く20自治体、「80%超~100%」が11自治体で続く。進捗(しんちょく)状況に開きが出ているのは全国的な傾向でもある。姶良市は要支援者3045人に対し作成3人。県内市で最も少なく作成率は0.1%に満たなかった。 市町村は2014年に要支援者名簿の作成が義務化され、21年5月に個別避難計画が努力義務化された。名簿は法的に災害有事には関係機関などで広く共有できるが、平時に個人情報を共有し計画作成するには本人同意を得る必要がある。 姶良市は、危機管理課が5年前から順次同意書を発送。今月20日現在、千人超から同意を得た。それに基づき福祉部が個別避難計画を作る流れだが、作成に関する案内文を送ったのは土砂災害警戒区域の約70人だけで、計画作成済みは同日現在、15人にとどまる。
福祉部は「十分な態勢が取れていなかった。関わる職員を増やし、危機管理課や地域のケアマネジャーらと連携を強化する。対象者に訪問するなどして作成を進める」としている。 要支援者数が4月時点で姶良市と同じ3000人台の伊佐市は計画作成数が1100人を超えた。同市によると、同意を得た時点で自治会のメンバーや民生委員が訪問し計画を作る仕組みができているという。 災害対策基本法は本人の同意や条例の規定がある場合、災害前に名簿を外部提供することを認めている。龍郷町は、平時の名簿活用に同意が要らない条例を昨年制定している。 21日、姶良市で開かれた県医療的ケア児者家族の会交流会で、参加者に聞くと、薩摩川内市の女性は計画は作成済みで、計画に沿って市職員らと避難先まで移動する訓練を実施。曽於市の女性は、いったん立てた計画の避難先が遠かったので、市と再協議中という。姶良市の有木真樹さん(49)は「万一の場合、自助努力だけでは限界がある。住む地域で避難支援に差が出ないようにしてほしい」と話した。
■個別避難計画 災害時に自力で避難が困難な「避難行動要支援者」ごとに市町村が作成する。避難手段や経路、避難先、支援者の氏名などを記載。近年相次ぐ水害で高齢者に被害が集中したことを受け、2021年に計画作成が市町村の努力義務とされた。政府は同年に定めた指針で支援の優先度が高いと自治体が判断した人については5年程度で計画作成を終えるよう求めている。
南日本新聞 | 鹿児島