「カブトガニをわしらにくれぃ!」 水族館と博物館の館長がトークバトル 海より深い「愛」通じるか
「玉野海洋博物館」(玉野市、愛称:渋川マリン水族館)と「カブトガニ博物館」(笠岡市)の間でカブトガニを巡る〝バトル〟が勃発している。きっかけは渋川マリン水族館長の「カブトガニをわしらにくれぃ!」という心の声が、カブトガニ博物館側に伝わってしまったかららしい。海の生物を愛する者同士の戦いは、30日にトークイベントという形で決着をつけるという。果たして、カブトガニの行方は―。 【写真】戦いの行く末が気になるキタオットセイのおとちゃん=渋川マリン水族館 このバトルのきっかけは、瀬戸内海国立公園指定90周年企画(玉野市など主催)の一つ「出張水族館」(30日、玉野市宇野・ショッピングセンターメルカ)。目玉展示のカブトガニは、繁殖地が国天然記念物に指定されている笠岡市のカブトガニ博物館から借りる予定になっている。そこで「展示が終わったらくれないかな~」と考えているのが、渋川マリン水族館の岡秀彦館長(53)だ。 渋川マリン水族館はウツボやカサゴ、ゴマフアザラシなど約180種類2000匹の生物を飼育している。岡館長は「カブトガニは瀬戸内海の希少生物の代表格。ぜひいただければ」と熱い気持ちを明かす。 実は水族館には、以前までカブトガニのメスが1匹いた。数年間、飼育していたものの、昨年春に天寿を全うしたという。岡館長は「お客さまも展示を期待しているはず。もし、いただけるのであれば、主役級の扱いで展示したい」と夢を語る。 岡館長はカブトガニ博物館の森信敏館長(53)と海洋生物の情報交換などで年に数回、交流しているという。「森信さんは農家のおじさんのような親しみやすい雰囲気。そんな人なので、もしかしたら(いただけるかも)」と淡い期待を寄せる。「あと以前、何か生き物をあげたような…」と岡館長。もしかしたら「ギブアンドテイク」の精神を訴えかける作戦かもしれない。 そんな岡館長の前に立ちはだかるのが四半世紀以上、笠岡のカブトガニを見守り続けた森信館長だ。「地方の博物館、水族館運営は本当に大変で、コロナ禍には生き物に触れる『タッチプール』をどうするかなどを渋マリさんに相談したこともある。同じ立場だからこそ痛みが分かる」と一定の理解を示す。だが「カブトガニは成体になるまで10年かかり、わが子も同然。岡館長の『カブトガニ愛』がどれほどのものか知りたい」とも話す。当日は〝勝負帽子〟のカブトガニをかたどったキャップをかぶり、決戦に挑む。 二人の直接対決はトークイベント「玉野市立渋川マリン水族館VS笠岡市立カブトガニ博物館~水域なき戦い~」(午前10時~、入場は先着順で無料)として、メルカ2階の玉野市立図書館・中央公民館多目的室で開かれる。玉野市商工観光課によると、早くも市民らの期待が高まっており、「行きたい」「生中継してほしい」という声が届いているという。 トークでは多様な生物のすみかとなる干潟についても熱く語られるという。岡館長は「田畑が減り、山が荒れたことなどが原因で、瀬戸内海や干潟の生物が減っている。そういった部分に目を向けてもらうことで、海を守る大切さを知ってもらえれば」と話している。 果たして渋川マリン水族館にカブトガニはやってくるのかー。海より深い「愛」があるか試される。