ベルリン金熊賞はアフリカ美術をめぐるドキュメンタリー、ホン・サンスは4回目の銀熊賞
第74回ベルリン国際映画祭の受賞結果が明らかに。マティ・ディオップの新作「Dahomey(原題)」が金熊賞を受賞した。 【ポスト】「Dahomey(原題)」はフランスに略奪されたアフリカ美術の返還をめぐるドキュメンタリー ディオップは初長編の「アトランティックス」にて2019年の第72回カンヌ国際映画祭でコンペティションのグランプリを獲得したフランス出身の女性。アフリカのセネガルにルーツを持ち、叔父には「トゥキ・ブキ/ハイエナの旅」で知られるジブリル・ジオップ・マンベティがいる。俳優としてクレール・ドゥニの「35杯のラムショット」で主演を務めた経験もある。 5年ぶりの長編監督作「Dahomey」は、映画「ウーマン・キング 無敵の女戦士たち」の題材にもなったダホメ王国にまつわる67分のドキュメンタリー。現在のアフリカ・ベナン共和国に位置したダホメ王国は19世紀末にフランスに占領され、300年近く続いた文化と歴史が消滅し、略奪された貴重な宝物がパリに送られた。2021年11月、推定7000点の宝物のうち26点がケ・ブランリ美術館から返還。その宝物の移動をカメラで捉えた「Dahomey」では、かつてダホメの首都だった場所にある大学の学生たちが長らく不在だった遺物の帰還について議論を交わす作品となっている。 ヨーロッパの博物館や美術館が所蔵する植民地時代の略奪品の返還を求める動きが活発化している近年のアフリカ諸国。ディオップは、アラン・レネとクリス・マルケルが監督し、植民地主義を批判する形でアフリカ美術を扱った1953年の映画「彫像もまた死す」からの影響も明かしている。 このほか韓国のホン・サンスがイザベル・ユペールをキャストに迎えた「A Traveler's Needs(英題)」が銀熊賞(審査員大賞)を受賞。ホン・サンスの同映画祭における銀熊賞の受賞は「逃げた女」の監督賞、「イントロダクション」の脚本賞、「小説家の映画」の審査員大賞に続く4回目となる。 演技賞では外見を劇的に変える外科手術を受けた俳優を描くスリラー「A Different Man(原題)」のセバスチャン・スタンが銀熊賞(主演俳優賞)、キリアン・マーフィーが主演を務めた「Small Things Like These(原題)」で修道女を演じたエミリー・ワトソンが銀熊賞(助演俳優賞)を獲得した。 第74回ベルリン国際映画祭はドイツ現地時間2月25日に閉幕。コンペティション部門の審査員長は、「ブラックパンサー」シリーズのナキア役や「それでも夜は明ける」で知られるルピタ・ニョンゴが務めた。主な受賞結果は下記の通り。 ■ 第74回ベルリン国際映画祭 受賞結果 □ コンペティション部門 金熊賞 「Dahomey(原題)」(監督:マティ・ディオップ) 銀熊賞(審査員大賞) 「A Traveler's Needs(英題)」(監督:ホン・サンス) 銀熊賞(審査員賞) 「The Empire(英題)」(監督:ブリュノ・デュモン) 銀熊賞(監督賞) ネルソン・カルロ・デ・ロス・サントス・アリアス「Pepe(原題)」 銀熊賞(主演俳優賞) セバスチャン・スタン「A Different Man(原題)」 銀熊賞(助演俳優賞) エミリー・ワトソン「Small Things Like These(原題)」 銀熊賞(脚本賞) マティアス・グラスナー「Dying(英題)」 銀熊賞(芸術貢献賞) マルティン・ゲシュラハト「The Devil's Bath(英題)」 □ エンカウンターズ部門 作品賞 「Direct Action(原題)」(監督:Guillaume Cailleau、ベン・ラッセル) 監督賞 フリアナ・ロハス「Cidade; Campo(原題)」 特別審査員賞 「The Great Yawn of History(英題)」(監督:Aliyar Rasti) 「Some Rain Must Fall(英題)」(監督:チウ・ヤン) □ パノラマ部門 観客賞(長編映画) 「Memories of a Burning Body(英題)」(監督:Antonella Sudasassi Furniss) 観客賞(ドキュメンタリー) 「No Other Land(原題)」(監督:Basel Adra、Hamdan Ballal、Yuval Abraham、Rachel Szor) (情報提供:IndieWire / VM / ゼータ イメージ)