花氈に見入る人たち（２６日午前、奈良市の奈良国立博物館で）＝宇那木健一撮影

　奈良・正倉院の至宝が並ぶ「第７６回正倉院展」（主催・奈良国立博物館、特別協力・読売新聞社）が２６日、奈良市の奈良国立博物館で開幕した。

　かわいらしい藍色の花文様があしらわれたフェルト製の敷物「花氈（かせん）」や、象牙で作られた鮮やかな赤色の物差し「紅牙撥鏤尺（こうげばちるのしゃく）」など５７件が公開されている。

　異国の香りを漂わせる宝物の数々が注目を集める。献物用の箱「沈香木画箱（じんこうもくがのはこ）」は、沈香や紫檀（したん）などアジア各地で産出する高級な木材を使い、幾何学的な文様を作り出す。和歌山県串本町の男性会社員（２７）は「木の色や木目を生かした精密な細工で温かみを感じる」と話した。

　板に布を挟んで染める夾纈（きょうけち）の技法で向かい合う鹿を表した「鹿草木夾纈屏風（しかくさききょうけちのびょうぶ）」の文様は西アジアがルーツとされる。横浜市港北区の主婦（６３）は「細かい柄を表現する技術力に感激した。木の下に動物を描く意匠は、西から東アジアの土産物店でよく見る。起源にも興味がわいた」と感心していた。

　大陸から伝わった仮面劇・伎楽（ぎがく）には、シルクロードの国々を出身地とする人物が登場する。「伎楽面　酔胡従（すいこじゅう）」は酔っ払いの面で、大阪府河内長野市の教職員（５３）は「赤ら顔をうまく表現している。当時の人の様子が想像できる」と興味を抱いていた。

　１１月１１日まで（会期中無休）。事前予約が必要な日時指定入場制で、観覧券はローソンチケットなどで販売している。