用宗駅舎を老朽化で建て替え、デジタル空間に保存 静岡の市民団体「歴史に興味示すきっかけに」
1936年に建てられたJR用宗駅(静岡市駿河区)駅舎が老朽化に伴い建て替えられることになり、地元の市民団体「用宗を楽しくする会」が駅舎をバーチャル空間に保存する取り組みを進めている。関係者は「建て替えられた後でも今の駅舎があった当時にいつでもタイムスリップできるようにしたい」と話す。 現在の用宗駅舎は白い壁と赤っぽい屋根が特徴の木造平屋建て。1909年に開業した駅の2代目駅舎として長年市民に親しまれている。JR東海静岡支社によると、新駅舎の完成時期など詳細は今後決定する。 建て替えを知った地元住民が駅舎の3次元点群データを取得し、デジタル空間に再現するプロジェクトを始めた。4月中旬に現地で計測作業を行い、プロジェクトに技術協力しているソフトウエア開発エリジオン(浜松市中央区)が駅舎の外観やロータリー、駅構内を専用機器でくまなく撮影した。今後、再現したバーチャル空間や動画をインターネットで一般公開する。 楽しくする会の海野雄介会長は「駅を通じて用宗という町の歴史にも多くの人が興味を示すきっかけになればうれしい」と話す。 静岡市もプロジェクトに協力する。景観まちづくり課副主幹の亀谷浩司さんは「ありし日の用宗駅にいつでもタイムスリップできることはシビックプライド(地元への誇り)醸成にも寄与する」とメリットを説明し、今後重要性が増すとみられるデジタルアーカイブのモデルケースにしたいと意気込む。 楽しくする会が中心となりクラウドファンディングで資金を募る予定で、返礼品にはデータを基に再現した駅舎の模型や用宗駅発の硬券を模した木製キーホルダーなどを予定している。 JR用宗駅 用宗町誌などによると、明治時代に東海道線の貨物輸送量が増える中、当時の日本国有鉄道(国鉄)が、地元陳情を受けて信号所を昇格させる形で開業した。高度経済成長期、安倍川の砂利がコンクリート骨材として首都圏で重宝され、輸送基地としてにぎわいを見せた。1965年にはピークとなる1日平均の乗車人員3190人を記録。その後、砂利採取が制限され、85年に安倍川駅(静岡市駿河区)が開業して利用が減った。JR東海静岡支社によると、2023年度の1日平均乗車人員は1333人。
静岡新聞社