ベンチで笑顔を見せる大谷翔平（ロイター）

◆米大リーグ　ブルージェイズ２―１２ドジャース（２６日・カナダ・オンタリオ州トロント＝ロジャースセンター） 　ドジャース・大谷翔平投手（２９）が２６日（日本時間２７日）、たったひと振りで敵地を黙らせた。昨オフの“大谷争奪戦”で敗れた敵地・トロントのブルージェイズファンが大ブーイングを浴びせる中、初回に３試合ぶりの７号先制ソロを放った。日本出身選手のド軍最多本塁打「７」としてロバーツ監督に並んだ。長打率、二塁打、塁打、長打数と合わせて両リーグ４冠となった。 　驚いた。歓声も少しあるかと思ったが、想像以上のブーイングだった。ストライクが入ると、球場が一球ごとに沸く。内角球で大谷がのけぞった時には大盛り上がりだったが、結果は引き立て役になった。 　ド軍移籍後初のブルージェイズ戦。昨オフ、エンゼルスからＦＡとなった際に移籍先の最終候補だった球団の一つで、当時は大谷がトロント行きの飛行機に搭乗したという誤情報が飛び交った。それだけに、敵地ファンの反応も含めて注目の一戦だった。ロバーツ監督は「ブーイングを受けて最初の打席でホームランとは」と脱帽。「彼がベンチに帰ってきたらうちの選手もブーイングしてたよ」と大谷が同僚にイジられていたことを明かした。 　「このチームはドジャースよりも彼を必要としていたんだ」。ブ軍のある男性ファンは言った。ブーイングは期待の裏返しでもある。大谷自身も理解しており「満員に近いファンの方がいて、選手冥利（みょうり）に尽きる。チームを好きだからこそ相手のチームにブーイングしたりすると思うので、そういう熱量は野球が好きなんだなと逆にリスペクトを感じるところかなと思います」と楽しんでいる様子だった。 　客席近くから試合を見てみると、大谷の打席になればビールを飲んでいる人が手を止め、球場スタッフも作業そっちのけでのぞき込んでいた。話題に事欠かないのがスーパースター。打者専念の年でも、大谷には敵、味方を超えた魅力にあふれている。（中村　晃大）