『酒とつまみ』編集長が検証!”スマドリの申し子”ホッピー白&黒「ベストマッチング&最凶ペア」
スマドリ(スマートドリンキング)が提唱されている。CMが流れ、スマドリの名を冠したバーや会社までできている。発信元のアサヒビールの公式サイトによれば「お酒を飲みたい時、飲めない時、そしてあえて飲まない時、飲む人も、飲まない人も、ひとりひとりが、自分の体質や気分、シーンに合わせて、適切なお酒やノンアルコールドリンクをスマートに選択できる飲み方」がその定義だ。 【画像】い、意外だ……! 『タモリ俱楽部』にも招かれた『酒とつまみ』編集長の美スタイル 今回、そんなスマドリの強い味方として「ホッピー」に注目してみた。 誕生から70年以上の歴史がある「麦芽とホップと酵母でつくられたビアテイストの清涼飲料水」のホッピーは約0.8%の低アルコール飲料。そのまま飲むこともできるが、焼酎を割るのに使われる飲み方が定番だろう。製造元のホッピービバレッジでは、ほかにもさまざまな酒をホッピーと組み合わせる飲み方を紹介している。ホッピーは飲み方の多様性にマッチした飲み物なのだ。 筆者はホッピーのスマドリとしてのポテンシャルを測るために、焼酎以外のお酒と組み合わせて検証してみた。ナビゲーターは酒飲み人生謳歌マガジン『酒とつまみ』(酒とつまみ社)の創刊メンバーであり、現編集長である渡邉和彦さんだ。さっそく、色々試してみよう。 ◆ホッピーの魅力は“割ることの楽しさ” ――1杯目は甲類焼酎をホッピーで割る定番の飲み方で乾杯しましょう。 「僕はだいたい1:5で割ります。日々、何も考えずガブ飲みしかしていませんが、こうして調整できるのもスマドリということなんですかね」 ――渡邉さんとホッピーの出会いを教えてください 「出会いは最悪でした(笑)。23歳のサラリーマン時代に十条(北区)で打ち上げをしたとき、上司が頼んだのを見て初めてホッピーを知りました。すごく飲みやすいからガンガンいっちゃったんですよ。そしたら、帰宅の電車の中で気持ち悪くなってきて、最寄り駅から家まで歩く時間が倍以上かかって、途中で吐いて……。もう二度とゴメンだと思って、それから6年ぐらい“ホッピー断ち”しましたね」 ――再び飲むようになったきっかけは? 「脱サラしてフリーライターになり、知り合いの編プロに間借りさせてもらってた時期があるんです。そこにいたフリーランスの先輩たちは酒好きが多かった。頻繁に飲みに誘われて、もつ焼きの『加賀屋』に行くのですが……先輩たちは僕にとって“天敵”のホッピーを頼むわけです。 最初のうちは手を出しませんでしたが、彼らに勧められて、新参者だったので断りきれずにホッピーを口にしたんですね。そしたらやっぱり飲みやすくて美味しい(笑)。しかも、気持ち悪くならなかったんです。それからは愛飲してますね。ちなみに当時酌み交わしていた人たちの多くが『酒とつまみ』の創刊メンバーです」 ――渡邉さんにとってホッピーの魅力とは? 「割るのが楽しかったんですね。僕にとっては自分で自由に割って飲むのが新鮮でした。“中(なか)”とか“外(そと)”って頼むのも含めてね。昔は“白ホッピー”しか置いてない店が多かったけど、“黒ホッピー”が出てきて、飲んでみたらこれも美味しい。一緒に飲んでる人と白、黒をそれぞれ頼んで、ハーフ&ハーフにしたりするのも楽しいですね」 ――ホッピーと『酒とつまみ』といえば、名物企画の“ホッピーマラソン”を抜きにしては語れません。JR中央線の32駅それぞれで下車し、駅周辺の「ホッピーが飲める店」を探して最低1セットのホッピーを飲み干していく。後に書籍化されるほどの人気企画でした。 「創刊号(2002年10月発売)から第4号(2004年1月発売)まで、1年半以上かけて走り抜きましたね。最初の企画会議ではマラソンではなくて“ホッピー駅伝”だったんです。中央線の32駅を1区3駅くらい、合計10区と見立てて、知り合いの編集者やライターに担当する“区”でホッピーを飲んでもらって、次の“走者”へとタスキを渡していく形式。 だけど、実際にやるとすると、走者を何人も頼んでスケジュールを調整しなければならない。そこで、初代編集長が『じゃあ、“駅伝”じゃなくて俺が“マラソン”をやるよ』って言い出したんです。東京駅にある『加賀屋 八重洲店』からスタートして、そこから高尾駅まで飲み続けです。もちろん、僕たちもできるかぎり“伴走”しました」 「第3号(2003年8月発売)の誌上では『怒涛のホッピー割り研究22連発』なる企画を実施してます。当時、ジン、赤ワイン、発泡酒からハブ酒まで22種類のお酒をホッピーで割ってみて、どんな味になるのかを編集部で検証しました。でも、そのときは白ホッピーのみの検証だった。今回、黒ホッピーも入れて検証するとうかがったので、ぜひやってみたいと思った次第です」 ――渡邉さんのリクエストで梅酒、ウォッカ、カンパリ、にごり酒を用意しました。これにウイスキーを加えた計5種の酒を白・黒のホッピーでそれぞれ割って味を確かめてみます。ちなみに、この4種の酒を指定した意図は? 「単純に当時の企画におけるベスト3とワースト1ですね。どれがそうなのかは言わないでおきます(笑)」 ――試飲してからのお楽しみですね。では、検証スタートです。まずは甲類焼酎と同じ蒸留酒なので味がブレないはずの【ウイスキーのホッピー割】からやりますか。氷を入れると分量がわからなくなるのでこのままで。割る比率は1:5で統一します。 「白ホッピー割は……どちらも蒸留酒だからそんなに違和感はない。黒ホッピー割を飲んでみると、味がある分、黒のほうが美味しく感じますね」 ――私は元々、黒ホッピー派なので、余計に美味しく感じます。次も同じ蒸留酒で比べてみましょう。【ウォッカのホッピー割】をいってみます。 「焼酎割と比べると、かなり酒の匂いがしますね。でも、白も黒も飲みやすいです。むしろさっきのウイスキーより違和感がない。飲み比べてみると、ウイスキーのホッピー割は少し自分の味の主張を出している感じがします」 ――ちなみにウォッカは『酒とつまみ』編集部の検証は何位だったんですか? 「2位です。当時の評価も高かったですね。ただウォッカのホッピー割は普通に飲めますけど、アルコール度数が37.5ですからね。普通の甲類焼酎なら20とか25じゃないですか。こんな強いホッピー割を焼酎と同じペースで飲んでたら、危ない(笑)」 ◆相性抜群ドリンクと、“混ぜるな危険”のワーストは? ――次は【梅酒のホッピー割】を試しましょう。梅酒はこのままストレートに飲むのが一番美味しいことはわかっておりますが……。 「ホッピーで割っても美味いですね。白も黒も、あとから梅酒の味がくる感じ。飲みやすいし、ホッピーとの親和性が高いですね。こんなカクテルがありそう。20年前の検証でも梅酒は3位という好成績を収めました」 ――そうなると、にごり酒とカンパリのどちらかが1位で、どちらかがワーストということになります。ドキドキしますね。では、【にごり酒のホッピー割】からいただきます。あ、今までのお酒と違って色の変化が明確で視覚的にも面白いですね。 「これも飲みやすいですね。白と黒なら、黒ホッピー割のほうが甘みを感じます。梅酒と違って酸味も強い。もうおわかりでしょうけど、にごり酒が22種類を試した中でのホッピーとの相性ナンバーワンでした。ディフェンディングチャンピオンなんですけど、今日改めて飲んでみると、梅酒はいいライバルですね。 元々、僕はにごり酒のホッピー割は美味いんじゃなかろうかと確信がありました。ホッピー検証企画の前にインタビューした有名プロレスラーの方が、選手の間でマッコリのビール割がすごく流行っていて、団体の道場にマッコリを常備しているという話をされていて……」 ――ちょっと待ってください。にごり酒が1位なら、最後に残ったカンパリがワーストということになりますね。ラスボスじゃないですか。 「そうです。でも、それは20年前の話です。僕は今回は同じ結果にはならない気がしています」 ――どういう意味でしょうか? 「実は当時の検証で使ったカンパリは、編集部にたまたまあった、いつ開封したのかわからない残り物だったのです。今回はこの検証企画の直前に購入したカンパリを用意してもらいました。しかも、白ホッピーだけではなく、黒ホッピーでも割るので、美味しくなる可能性があるんですよ」 ――なるほど! では、大いに期待しながら【カンパリのホッピー割】を飲んでみます。匂いはあまりそそられないですね。……マズい!! これ、薬品を飲んでるみたいです。しかも舌に変な味がまとわりつきます。 「いやー、白も黒も関係ないですね。ホッピーと組み合わせると変な化学反応が起きてしまうのかもしれません。20年の時間を経ても同じ結果でした。当時の我々の舌は間違ってなかったんですね」 ――見た目、匂い、味のすべての要素がワースト。飲み終えた舌の余韻まで全部マズい。カンパリソーダは大好きですが、カンパリのホッピー割はいただけませんね。 「うーむ(笑)。そぐわない飲み方をしてカンパリにもホッピーにもホントに申し訳ないです」 以上のようにホッピーのスマドリとしての可能性を検証してみた。それぞれのベスト3は以下のランキングになる。 渡邉氏 1、にごり酒の白ホッピー割 2、梅酒の白ホッピー割、3、にごり酒の黒ホッピー割 筆者 1、梅酒の白ホッピー割 2、にごり酒の黒ホッピー割、3、にごり酒の白ホッピー割 個人の感想なので参考にとどめてほしい。その日の気分で、ホッピーを活用し、大いにスマドリライフを楽しもう! 撮影・文:佐野裕 さの・ゆたか フリーライター。ビジネス、人文などを主な守備範囲とし、雑誌・ネット等、メディアを問わず、記事の取材・執筆を中心に活躍。著書多数。 取材協力:酒とつまみ編集部 http://www.saketsuma.com/
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