大谷、藤浪が再燃させた160km時代 球場によってスピードが違うって本当?
三宅さんが阪神時代は、スコアラーのデータが球場の表示の誤差で狂わないように、オープン戦の段階で、手持ちのスピードガンで、全球場で一通り計測を行い、正確な数値との差異を確認しておき、選手にデータを渡す際には「出る」とされている球場のものは、そこから2km、3kmを引いて修正しておいたという。 表を見てもらえればわかるが、160km以上を記録した過去の6人のうち、2人が神宮で記録しているのは単なる偶然ではないのかもしれない。ただ、角度などの問題で差異が生じても、スピードガンは正確な数値以上は出ない、とされている。 メジャーリーグでは球場によってスピードガン表示が違うという点が問題視され、現在、全球場に「PITCHf/x」と呼ばれる、3方向からカメラで解析するシステムを設置、導入した。このシステムでは、初速、終速、球の回転数、球筋、リリースポイントなどのあらゆるデータを取得することが可能で、より正確なデータを弾きだすことができる。それでも、まだ球場によって差異があるというから、永遠に解決できない問題なのかもしれない。 ちなみに、この「PITCHf/x」や、それに似た分析装置が、日本では、ヤフオクドーム、楽天のコポスタ宮城、最近では横浜スタジアムにも設置され、チームのスコアラー活動、戦術、戦略に利用されている。昨年のヤフオクドームで行われたクライマックスシリーズ、日本シリーズでは、テレビ放送にこのデータが使われた。チームの戦術、戦略に利用するためには、正確なデータが必要だろうが、ファンサービスの意味合いをこめた球場のスピードガンは、多めに出たほうが、ファンには楽しみが増えるのかもしれない。 最後に、中日のレジェンド・山本昌氏が語っていたスピード論を記しておきたい。 「現役時代には、確かに球場によってスピードは出たり、出なかったりしていた。僕は大谷のように160kmを投げることはできなかったが、重要なのはスピードガンの数字ではなくストレートの質。いかにバッターが打席で速く感じるか。全盛期の藤川球児のような浮き上がるストレートをイメージしてもらえればいいと思うが、回転や、リリースの位置によって、ストレートの質というものが高まってくる。またその質のいいボールを平均して投げることができるのか、どういう場面で投げることができるのか、ということも重要。僕のように配球で、速く見せるという投球術もある。若い投手にはストレートの質にこだわって欲しい」