“ベルトの価値”を考えに考え抜いた1年。ユニオンMAXの最多防衛記録を持つ藤田ミノルが神野聖人に負けられない理由。そして対戦したい相手とは…?
BASARAの年内最終戦である12・29新木場で、神野聖人とユニオンMAX戦をおこなう藤田ミノル。藤田は今年1月に同王座を戴冠し、11カ月間ベルトを守り最多防衛記録を樹立。各団体で活躍し、駆け抜けた1年を振り返ってもらうとともに、タイトルマッチに向けていまの思いを聞いた。 【写真】実はイケメン! 藤田ミノルの素顔
――この1年で32団体(イベント含む)に参戦し、走り続けてきた藤田選手ですが、この'24年はどんな年でしたか? 藤田 全然こんな年になるとは思ってなかったですね、毎年そうなんですけど。毎年お正月に年末はどんな感じになってるのかなって考えるんですよ。 ――想像するんですか? 藤田 想像というか一個一個仕事をもらって試合をしてという生活なので、長期的なプランってなにひとつ立てられないんですよ。自主興行もここでやるか、ぐらいしか。なので2025年の年末にご飯が食えてない状態だったらどうしようみたいなことも薄っすら考えますね。今年は予想外が多い年だったなと年末になって思います。 ――約1年間ユニオンMAXを守り続けてきました。 藤田 それも予想外でした。過去、2020年の8月末に(BJW認定)デスマッチヘビーを取りましたけど、あれは半年でしたから、久しぶりに長期で保持していますね。東京愚連隊の東京世界ヘビーはずっと家に飾ってあるんですけど。 ――いま現在も保持しているということでしょうか? 藤田 保持っちゃ保持してますけど、保管してます(笑)。こうやってコンスタントに防衛戦をやって、しかも団体の一番のベルトというのは初ですね。それこそ団体の象徴ベルトを私そんなに持ってなかったので。 ――BASARAのベルトを持ち、各団体に出ていました。 藤田 でも正直、ベルトを持って他団体に呼ばれてもベルトの価値って上がらないと思うし。チャンピオンになってから、そもそもベルトの価値ってなにかなって考えることも多くて。べつに試合前に全然関係ないベルトを掲げたところで、これになんの意味があるんだろう、みたいな。でもやっぱりチャンピオンの責任じゃないですけど、自己満足とも違う気もするんですけど、どんな会場でも持ってってコールとかしてもらったり、ベルトを見せることがチャンピオンの責任じゃないのかなと、価値が上がるとかそういううんぬんべつにして。 ――王者の責任であると。 藤田 ベルトがあることでへんな試合はできないし、みたいな部分もあったりだとか。 ――そういったことも含めて考えることが多い1年だったのですね。 藤田 考えましたねぇ。単純にいかにたくさんの人にタイトルマッチを見てもらうかで価値が上がるのかなみたいな。あのベルトに挑戦したいと思ってもらうこともひとつ、でもやっぱりどんなにいい試合をしても、お客さんが2人とかだったらわからないじゃないですか、価値ありますとか言われても。だから負けを認めるみたいでイヤなんですけど、それこそWWEだとか一番価値があると思われると思うんですけど、なにが違うって見られた数だと思うんですよ。知名度もあると思いますし。 ――藤田選手はBASARAの大会を「すし詰め」状態にすると掲げています。 藤田 そうですね。なのでそういう部分でそこにこだわってたのはありますね。もっとタイトルマッチを、BASARAを共有したい。そこで価値があるものと認められるのかなという感じがしますかね。見られたからって面白くなきゃそりゃつまんないだろうし。でもそれだけで価値を決められてたまるかみたいなのがインディペンデントだとも思うんですけど。そのなかでももっと足掻きたいというのはあります。 ――なるほど。 藤田 我々って自主制作というか、CDを作ってライブやってるようなもんなんですよ。大きいレコード会社に所属してるわけでもないし、プロモーションをしてくれるわけでもないし。それでも大きいところに負けないものを見せていきたいとは思ってます。見る方は人それぞれじゃないですか。 ――そうですね。 藤田 全然話変わるんですけど、パチンコが好きだったんですよ。 ――パチンコが趣味だったんですか。 藤田 だったんですけど、コロナで死にかけて行かなくなっちゃったんですよ。時間がもったいないみたいな。せっかく生きてるのになんでそこで時間を使ってんだと。で、映画を見に行きだしたんですけど、基本的に大きい映画館に行くんですよ。近所にも聞いたこともないような小さい映画館もあるんですよ、2つくらい。こっちのほうが我々なのかなみたいな、ちょっと恥ずかしくなっちゃったんですよ。 ――恥ずかしくなったとは? 藤田 映画を見たと言っても12~3本しか見てないですけど、基本的に大きいところしか行かないから、メジャーどころのファンみたいな。べつにそこまで映画に熱を入れてないし、ポップコーンを食べながら見るくらいがちょうどいいんですよ。けっこう頭ごっちゃごちゃになったりして。 ――いまも小さい映画館には行っていない? 藤田 行ってないですね。小っちゃいところはポップコーンが売ってないんですよ。 ――それは大きな理由になります。 藤田 なりますよね(笑)。ポップコーンのないところを楽しめるところに行きたいみたいな。小さい映画館では予告編もあんまりやってないでしょうし。そういうのを考えると頭おかしくなりそうになります。 ――すごい考えてらっしゃる…。 藤田 だから頭おかしいファンを増やしたいなと。 ――そこにつながるわけですね。 藤田 私は映画はにわかファンくらいですが、こじらせプロレスファンを増やしたいですね。自分も矛盾してんなみたいな。 ――人間みんなそうだと思います。 藤田 そんなもんですよね。なんとかプロレス一本で見てもらいたくても、見る側の勝手じゃないですか。だからこじらせプロレスファンを増やすしか私の生きる道はないなと。今年1年生活するなかでそう感じたんですね。石森(太二)さんの興行に出て一時的にパッと注目を浴びたりもするんですけど、かといってメジャー映画に出続けたいとかメジャー団体に出続けたいとかもちょっと違うかなって。そこでずっと頑張っていけば生活水準も変わっていくんでしょうけど、そこに魅力を感じないなって。あと、1個思ったことがあって、より個人を磨いていかなきゃいけないんじゃないかなと。それは団体に所属してる人も。佐藤光留選手が今年12カ月連続で興行をやってたんですよ、忙しいなかで。そのエネルギーって本当にすごいなって思って。そういう個のエネルギーが強い人が多い団体がより飛躍するんじゃないかなと思います。 ――それはもちろんBASARAにも言えることだと。 藤田 そうですね。みんなで頑張ってほしいんですけど、個人ももっと高めてほしいですね。 ――BASARAの話が出たのでそちらに話題を移しますと、11・29新木場でおこなわれたユニオンMAX選手権次期挑戦者決定ワンデートーナメントを神野選手が制して、12・29新木場での王座挑戦が決まりました。 藤田 私はその日、米山さんの周年興行に出てたので、気が気じゃなくて常に情報をチェックしてたんですよ。まず飛び込んできたのが(中野貴人)貴くんが塚本さんに勝ったという情報だったんですよ。速報で見てあれ?って思って。予想外の感じになるのかなと。決勝が神野vs中津と出てて、タイトルマッチでは中津良太とやってなかったので。 ――私も中津選手が勝ち上がる予想をしていました。 藤田 シングルで勝ったことがないんですよ、これは中津良太が来るだろうと踏んでいったらそこにいたのは神野さんだったので。 ――今年3月以来2回目の王座戦となります。 藤田 そうですねぇ。 ――体も仕上がっています。 藤田 仕上がっていますね、体は。 ――と言いますと…。 藤田 体が仕上がって頭がちょっとおかしくなってる気が…。 ――そう考える理由はなんでしょうか? 藤田 やっぱり筋肉のこと以外、頭が回ってないんじゃないかなと。 ――神野選手はBASARA全体に対して「尖った方がいい」、また髪色をレインボーに染めて「十人十色」と発言していました。 藤田 オマエが言うんじゃねえ(笑)。あの人は尖ってるは尖ってるとは思います、ある意味。ひとりデカかったのに体を絞りだして、なにになりたいんだ?っていう感じもありますし。個性よりも肉体をとったみたいな。 ――王者にはそのように映っていると。 藤田 より研ぎ澄まされてる感じはしますけど。たぶん3月のときよりだいぶ絞ってますもんね。 ――そのような印象を受けます。いまは神野選手からさらなる自信を感じます。 藤田 そうですね。何が自信につながってるかは私にはわからないですけど、体に結果がついてきてるというところじゃないですかね。 ――神野選手の印象をうかがえますか? 藤田 基礎体温が高そうな気はしますね。あんまり筋肉だとかタンパク質だとか栄養素以外の話を聞く必要はないかなと思います。突き抜けてるんであの人は。自分以外に興味ない感じがしますね。我が道をいく人ってそうですよね。団体を背負うという気持ちもなさそうですし、今月の前哨戦でマイクをしてるときに帰って行ったんで、まだ背負うという意識はないんじゃないかな。マイク含め経験がまだ少ないのかなと。こういうところ出せばいいのになというのは備わってるはず。自分のなかではあると思うんですけど、それを選んでパッと出すのが苦手なだけなのかな。 ――そこで藤田選手はトーナメントに敗れた人たちの気持ちも背負ってこいとコメントを出していました。 藤田 そもそも団体を背負うタイプではないと思います。背負う気持ちもあるのかもしれないですけど、でもなにも言わずに帰っちゃうのを見てたら、トーナメントで負けた選手のことを背負ってないのかなと思ったんですね。せめてそのくらいは背負ってこいよと。 ――その気持ちがあればなにか一言あったはずだと。 藤田 自分にしか興味がないところが如実に出たのかなと思いますね。 ――現在、右手親指を脱臼骨折している状況ですが、具合はいかかですか? 藤田 手は正直あんまりよくないです。ギプスを替えたときにちょっと臭くなってきたかなと思ったんで、床に額を擦りつけて先生にお願いしてギプスを取ったので、あんまり調子はよくないです。誰もギプスに「早くよくなってね」と寄せ書きしてくれなかったんですよ。あれを書いてくれていたらずっとつけてたと思います。 ――ありがとうございます。では最後に意気込みをお願いします。 藤田 神野聖人戦には集中しますし2度目の挑戦を受けるので、これで私が2連勝することになったら、しばらく挑戦できないぞという感じもありますね。私自身もまだやりたい相手もいるので、きっちり防衛して来年につなげたいなと。 ――やりたい相手ですか。 藤田 さっき名前が出た人ですね。新記録は打ち立てましたけど、BASARAの全員とは防衛戦やってないんで。 ――王座戦はギプスなしでおこなう予定でしょうか? 藤田 なしでいくと思います。指砕けてでも勝ちにいきます。砕け散っても。
週刊プロレス編集部