信用情報を提供する「クレジット・ガイダンス」って? 内外事例と普及の6条件
クレジット・スコア先進事例:中国 芝麻信用
芝麻信用(ジーマしんよう、Sesame Credit)は、中国のアリババグループ傘下のアント・フィナンシャルがアリペイのユーザー情報をもとに提供するクレジット・スコアで、中国社会で広く浸透している。 高いスコアを持つユーザーは、レンタカー利用時の保証金が不要、ローン金利優遇などの特典を受けられたり、結婚が有利になったりするとも言われる。 米国と比較するとかなりプライバシーに踏み込んだ情報を利用しており、以下の5つの要素からスコアは算出され、350点から950点までの範囲で評価されることになる。 (1)身分特質(社会的地位・身分、年齢・学歴・職業など) (2)履行能力(過去の支払い状況や資産など) (3)信用歴史(クレジット・取引履歴など) (4)人脈関係(交友関係及び相手の身分、信用状況など) (5)行為偏好(消費の特徴や振り込みなど) 中国社会に浸透した芝麻信用による「信用の可視化」で、中国社会で不正防止やマナー向上といった変化が起きつつある。 無人コンビニで盗難被害がほぼゼロとなり、無料レンタルの雨傘がきちんと返却され、サービス提供後の事後支払いでも問題が起きない、といった改善が見られている一方で、以下のような課題も指摘されている。 ・データの過剰収集になる可能性がある ・スコアをアップするため履歴を偽る(例:高級車の購入歴を偽装するなど) ・農民などは銀行やクレジッドカードの履歴がない ・高学歴、高所得層、官僚などのスコアが高くなる一方、所得の低い人は社会的信用があってもスコアが高くなりにくい
国内クレジット・スコア事例:みずほとソフトバンク、ドコモ
信用情報を提供する3社のような伝統的なアプローチ以外にも、近年では、個人の趣味・志向、SNSの交流状況、携帯通信の利用状況などを活用した新しい信用スコアを提供しようとする動きがある。 J.Score みずほ銀行とソフトバンクが連携して2017年に本格稼働したAIを活用した信用スコアリング及び貸し出しサービスJ.Score(ジェイスコア)においては、質問への回答やスマホの利用状況、金融取引履歴を基にスコアを算出し、個人融資を行うサービスを導入した。 スコア登録者が増えたにもかかわらず、借入を利用する人は増えず、採算確保の見通しが立たなかったころから、2022年にはサービスを終了するに至った。J.Scoreが成功しなかった主な理由として、以下の点が挙げられる。 ・高スコア層の利用意欲の低さ:AIスコアが高いユーザーは、既に他の金融機関から好条件で融資を受けられる可能性が高く、J.Scoreのサービスを利用する動機が乏しかったと考えられる。 ・低スコア層への対応課題:スコアが低いユーザーは、貸し倒れリスクが高いため、J.Scoreとしても積極的な融資が難しく、結果として利用者層の拡大に限界があった。 ・既存スコアとの差が不明確:返済実績、金属年数や資産背景といった静的な情報をもとづいて算出される既存のクレジット・スコアと差別化を図るために、J.Scoreはライフスタイル、趣味や嗜好といった要素も考慮してAIによる新しい審査方法を確立しようとしたが、 ・ユーザーへの説明不足:信用スコアの算出方法やデータの取り扱いに関する説明が不十分で、ユーザーからの信頼を得ることが難しかったと。 ドコモスコアリング NTTドコモの回線利用者向け融資サービス「ドコモレンディングプラットフォーム」において、ドコモのビッグデータを活用して算出したスコアを2019年8月より提供するようになっている。携帯通信など各種サービス利用によって得られるデータを解析し、自動的に算出したユーザーごとの信用スコアを金融機関の審査に活用できるようにしたものである。 M.Score フィンテック企業MILIZEが設立したみらいスコアとテンソル・コンサルティングは金融機関の顧客データ活用を促進するための「SaaS型信用スコアモデル」として2024年2月「M.Score」本格版アプリをリリース。スマホやPCでアプリの質問に回答するだけで自分の信用スコアを確認することができ、今後幅広い展開を図っていくとしている。