日本でも広がる?自治体初、都が発行目指す債券「グリーンボンド」とは
第三者機関による厳しいチェック体制が必要 ── 投資家からは信頼
「グリーンボンド債はCO2の削減・ごみの削減・有害物質の削減・飲用水にできるように水を浄化するといった環境に資する事業に対して発行できます。グリーンボンド債を起債する際にも第三者機関によるチェックが入りますが、集まった資金がきちんと目的通りに使われているのかもチェックされます。そうした厳しいチェック体制があるのが、グリーンボンド債の特徴です」(同)。 ESG投資の機運が高まっているだけではなく、第三者機関による厳しいチェック体制も投資家から信頼と資金を集める要因になっています。第三者機関を入れることで、これまでの債券より発行に一手間かかるグリーンボンド債ですが、発行する側にもメリットがあります。グリーンボンド債という新しい債券を発行することにより、資金調達方法を多チャンネル化できるという点が挙げられます。資金調達の選択肢が複数できることで、発行する債券の利率を通常より低く抑えられるのです。
国内は低調 発行例はわずか5件……日本人の投資への関心の薄さ起因
国際的にグリーンボンド債の機運が高まっている一方で、日本国内ではグリーンボンド債の機運は高まっていません。 「国内では、日本政策投資銀行が2014年、三井住友銀行が2015年と早い段階からグリーンボンド債を発行しています。とはいえ、いまだ日本での動きは鈍く、グリーンボンド債の発行例はわずか5例。総額で1500億円程度です」(同)。 日本国内でグリーンボンド債が注目されないのは、ESG投資という概念が定着していないことが大きな要因ですが、そもそも日本人が株式市場や債券市場に対して関心が薄いことにも起因しています。そのため、国内で発行された数少ないグリーンボンド債も主に機関投資家を対象にしていました。
トライアル版「環境サポート債」は発売初日に完売
環境省は2016年にグリーンボンドに関する検討会を立ち上げ、国内市場でグリーンボンド債を普及させる術を模索しています。 環境省の動きよりも一足早く、都は昨年11月にグリーンボンド債のトライアル版として「環境サポーター債」を発行しました。環境サポーター債は、個人・団体問わず購入が可能で、100億円の債券は発売初日で完売。 そうした状況を受け、都は今年度の10月~12月に200億円分のグリーンボンド債を発行する予定にしています。グリーンボンド債で集めた資金を、都は上下水道の省エネ化や環境にやさしい都バスの導入のために使うとしています。 都が地方自治体として初めて挑戦するグリーンボンド債の発行は、まさに環境大臣を経験している小池知事ならではの政策といえるでしょう。 小川裕夫=フリーランスライター