法務局 最大1カ月半待ち 相続登記義務化で相談増 「10万円以下の過料」新設が影響?
今年4月から、不動産(土地、建物)の相続登記の申請が義務化されたことを受け、法務局や司法書士会への相談が増えている。法務局では予約から最大1カ月半待ちという状態が続く窓口も。3年以内に手続きしなければ、10万円以下の過料を科される可能性があり、当面は混雑が続きそうだ。(斉藤正志) 【写真】相続登記の義務化、司法書士が解説 3年超放置は10万円以下の過料 ■延びる待ち期間 神戸地方法務局によると、支局、出張所を含む兵庫県内17カ所での登記手続き案内は、ここ1年ほどは予約待ちの期間が長くなっているという。 今年2月には、予約を入れてから最大1カ月半待ちのところがあり、6月になっても同様の状態になっている。神戸市中央区の本局では、2月に10日程度だった待ち期間が、6月に3週間程度まで延びた。 いずれも約7割が相続登記関係の相談といい、相談員が申請書類の記入方法や必要な添付書類などを説明している。3月ごろには、4月までに相続登記しないと過料が科されると思い込み、相談に訪れる人も目立ったという。 兵庫県司法書士会による無料相談でも、不動産登記などに関する相談件数は増えている。2023年度は3315件に上り、新型コロナ禍前の19年度に比べて約1・5倍になった。 ■九州より広い「所有者不明土地」 義務化の背景には、誰が所有者なのか分からない「所有者不明土地」の増加がある。その面積は九州より広いとされ、社会問題になっている。 これまで相続登記は任意だったため、登記簿上の所有者が亡くなっていたり、連絡が取れなかったりして、公共事業や都市開発などの妨げになるケースが起きている。東日本大震災では、土地の権利関係の整理に時間がかかり、復興事業を遅らせる一因になった。 このため法改正で、今年4月から、不動産の所有権の取得を知った日から3年以内に、必ず相続登記の申請をしなければならなくなった。相続人が非常に多数に上ったり、遺言の有効性が争われたりしているケースなどは、申請できない「正当な理由」として、過料は科されない。 過去の相続も義務化の対象となるが、27年3月末までの3年間の猶予期間が設けられている。 ■「救済制度」も 一方で、手続きに時間がかかる場合の「救済制度」も新設された。 「相続人申告登記」で、自分が相続人であることを法務局に申し出れば、3年以内の申請の義務を果たしたことになる。 兵庫県司法書士会理事の中正秀和さん(51)は「相続登記をするには、相続人全員に遺産分割協議書に実印を押してもらって、印鑑登録証明書と一緒に返送してもらうなどの作業が必要。相続人が多数に上る場合は、非常に時間がかかることもある」と話す。 ◇ 中正さんに、相続登記の義務化について、制度や手続きを詳しく解説してもらいました。不動産の相続を放棄する際に注意すべきことや、子どもらに迷惑をかけないために生前からできることなども、Q&Aで紹介しています。