退職代行を使われた上司の胸のうち「ブラック企業じゃないのに…なぜ?」「自分の能力不足?」 消えない消せない“罪悪感”
退職したい本人に代わって会社に退職を申し出たり、手続きや有休消化などの調整を代行してくれる「退職代行」サービス。テレビや新聞で取り上げられることも増えましたが、実際に自分の勤める会社で利用されたケースを見聞きする機会が増えた、という方もいるのではないでしょうか。実際に代行サービスを「使われた側の上司」の心中は複雑なようです。 【漫画】「新入社員くん、どうして退職したの?」聞かれるたび、責められているような気分に…
「まさか」と「やっぱり」の両方の気持ち
関東在住・50代会社員のAさんは、社員数300人弱の中小企業で、経理課の課長としてお勤めです。 企業規模は大きくないものの、先代の社長から安定経営が続いていて社内の雰囲気もよく、年功序列がベースの給料も「高給」とは言えないながら、家族を持つのをためらう必要はない程度に支給されています。長年勤める中で、Aさんは退職代行について「うちみたいなのんびりした会社には縁がなさそう」と感じていました。「たまに新しいチャレンジをしたいと転職する人もいますが、そこはみんな応援して、職場として強く引き留ることもしないし…」と、他人事のように感じていたのです。 しかし、久しぶりに経理課に配属された新入社員が、会社として初めて「退職代行」を利用して退職する事態に直面します。 小さな会社のため人事課のようなものはなく、退職代行サービスからの電話は直属の上司だったAさんが受けることに。「退職理由ですが、一身上の都合ということでご了承ください」と具体的な理由も明かされませんでした。 退職手続き自体は特にトラブルになることもなくスムーズに進んだものの、Aさんの心には、しばらく「まさか」と「やっぱり」の感情が交錯したといいます。
上司が抱える「罪悪感」
退職代行が利用されてから、Aさんは周囲からこんな声をかけられることが増えたといいます。 「なんで新入社員くんは退職したんでしょうね」 「退職代行なんて、どうして使ったんだと思いますか?」 何気ない質問ですが、Aさんはそのたびに「退職代行を使おうと思われてしまったくらい、日常のコミュニケーションが取れていなかったのではないか」「上司としての能力が足りなかったのではないか、これから新入社員の指導がきちんとできるのか」と責められているように感じたといいます。 Aさんは「退職代行を使われたことに、こんなに『罪悪感』を感じるなんて思ってもいませんでした。あのサービスはパワハラが横行するようなブラック企業を辞めるためのものだと思っていたので…」 「でも…ひょっとしたらホワイト企業だと思っているの、上司側だけかもしれないわけですよね? 直接理由が聞けなかったことで、自分に悪いところがあったんじゃないかという気持ちは消えなくて、しかも消しようがないので…」 Aさんは今でも考え込んでしまうそうです。