市民プールは競技場に移転、長崎市が方針 「陸上練習場」は茂里町に…被爆者4団体は懸念
長崎市松山町の平和公園内にある市民総合プールと陸上競技場の移転・存続問題で、鈴木史朗市長は15日、プールを現在の競技場の位置に移し、競技場に代わる「陸上練習場」を中部下水処理場跡(茂里町)に新設する方針を明らかにした。市内で被爆者4団体の代表者に説明した。プールを処理場跡に移す案に比べ、建設費を20億円以上抑えられるとしている。4団体側は鈴木市長に懸念や反対の声を伝えた。 プールの大部分は、県が整備する長崎南北幹線道路(同市-西彼時津町間)のルートに重なるため、移転が必要。施設の再配置案を検討する「平和公園再整備基本計画検討委員会」は、プールと競技場のいずれかを同処理場跡に移す2案に絞り、6月に鈴木市長へ報告した。 一方で周辺は爆心地に近く、被爆者4団体などはプールを建設すると工事で爆死者の遺骨が掘り起こされると懸念。7月に競技場利用者らでつくる市民団体「市営松山平和運動公園を守る会」と連名で、競技場の現地存続を求める要望書を市に渡していた。 鈴木市長はこの日、4団体の代表者に「プールを競技場に移転する案が適当と考えている」と説明。理由として、処理場跡にプールを建てる場合は地盤改良が必要で、建設費が20億円以上かさむと強調。競技場を処理場跡に移しても、利用する中高生らの交通アクセスに支障はないとの考えも示した。 これに対し、県平和運動センター被爆連の平野伸人副議長(77)は「爆心地に近い場。亡くなった人の慰霊に配慮しているのか」と指摘。鈴木市長は「鎮魂の意味も込めた特別な地域だと考えている。これまでと変わらずスポーツを通して平和を思う形にしたい」と述べた。プール建設中に遺骨などが出土した場合は適切に対処するとした。 長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(84)は、市の方針説明が唐突で同会や4団体の中で合意形成ができていないとして「もっと慎重に検討してほしい」と注文した。鈴木市長は18日、「守る会」の関係者とも面会し、方針を説明する。