J2ベガルタ仙台を率いる森山佳郎監督が掲げた3つの目標とその現在地
2000年から広島ユースで指導者としての一歩を踏み出し、13年以降は世代別日本代表の監督として選手を育て上げてきた森山佳郎氏。今年は56歳にして初めてプロチームの指揮を執ることを決意。J2ベガルタ仙台で“新米監督”として就任し、3つの目標を立てて新たな道をスタートさせた。 「言うは易く行うは難し」。言葉で言うのは簡単だが、実行することは難しいことが多い。しかし、森山監督は自ら立てた目標を就任から半年もたたずに着実と行っている。 1つ目は「ベガルタ・グロウンを50パーセントに近づけていく」。ユースとの連携を図り、地元の有望な選手たちを育て、トップチームで活躍する道筋をサポートさせることを目標にしている。仙台では昨年から「GKプロジェクト」と題し、トップチームの選手やコーチがアカデミー生に直接指導する取り組みを行っており、今年は4月25日に1回目が行われた。本来はトップチームの監督の姿はないが、森山監督は視察に訪れて1時間練習を見つめていた。最後にはアカデミー生にプロになるために必要な努力の姿勢や人間性などを伝えていた。 それだけでは終わらなかった。同プロジェクト後にはユース生の練習もあり、それも熱心に視察。「僕自身も興味あるし、ユースも見たいと思っていたからね」。今季はすでにユースから2種登録されている選手が3人いることもあり、練習をしている選手たちは監督の前で生き生きとプレーしていた。 2つ目は「宮城・仙台に必要とされ、愛され、応援されるクラブに」。地域密着を目指しサポーターやスポンサーのために全力を尽くし、子どもたちの憧れの存在を目指していく目標で、直近では5月7日の練習後にファンサービスを実施。しかし、練習終了直後に雨が降り出すという最悪の天候でも、最後までサインに応じていた。「大変でしたね」と言う筆者の問いにも「こんなの当たり前ですよ」と、何一つ嫌な顔をすることなく笑顔を見せた。日常会話も気兼ねなくしてくれている人柄の良さを、一度練習場に足を運んで体感してほしい。 最後は「本来いるべき場所に戻る」。昨季の16位という結果を謙虚に受け止めながら、1戦に全てをささげプレーオフ圏内から上位進出に狙う目標だ。今季チームは若手育成を目標にしながらも、リーグ戦15節を終えて7勝5分け3敗の3位と結果を出している。まだまだ攻撃では練度が必要も、直近2年に比べて守備は安定。選手たちも「ゴリさん(森山監督)のために」と日々練習に励み、とてもいい雰囲気で力を伸ばしている。 この3つの目標をうそ偽りなく実行し、初めて戦うJリーグでは「充実」と「重圧」を感じながら戦っている。「寝ていても何か考えてるし、お風呂やトイレもそう。自分らの試合も相手の試合も何回も常に映像を見ている。最初は1節見れば良かったですけど、10節になると9、8、7とどこまで振り返ってもきりがない。あまりやりすぎても心の健康にもよくないので、まだ試行錯誤しながらやってます」。唯一の休息は試合に勝った後の数時間。翌日には次の試合を考えている。本気でクラブを変えようと何事にも熱く一生懸命に取り組む指揮官がJ1昇格&定着を目指し、地域のサポーターとともにクラブを強くしていく。(東北支局・山崎賢人)
報知新聞社