『VIVANT』未解決の謎を振り返る 野崎のさらなる秘密に正体不明の日本のモニターも
堺雅人が主演を務め、阿部寛、二階堂ふみ、松坂桃李、二宮和也、役所広司ら豪華俳優陣らが共演したドラマ『VIVANT』(TBS系)が2023年12月31日より再放送されている。 【写真】「(最終回は)積み上げてきたすべてが絡んでくる」 『VIVANT』でマントに身を包んだ役所広司 本作は、『半沢直樹』シリーズ(TBS系)などで演出を務めた福澤克雄が原作を手がけたオリジナルドラマ。国内だけではなく、モンゴルで2カ月半にも及ぶ撮影が行われ、映画を思わせるような壮大なスケールと自然の映像の美しさ、予想できないスリリングな展開で回を追うごとに大きな話題となった。 本作は、単に「別班 vs テント vs 公安部」という形ではおさまらない複雑なストーリー展開を見せ、そして最終回を迎えても多くの謎を残したままだ。ここでいくつかまだ疑問の残る点をピックアップしてみたい。 ■Fの誕生 乃木(堺雅人)は元々は気弱な性格なのだが、F(エフ)という別人格を持っている。Fは短気で好戦的だが、冷静で的確な判断が素早くできる。うだうだと悩みがちな乃木に脳内で話しかけ、発破をかけたり、決断を促したりしているのもFであることが多い。乃木がFにいつも従っているわけではなく、時にはその忠告を無視して進んでいくことがあるところもおもしろいところである。 Fの誕生には乃木の複雑な生い立ちが関わっていると考えられるが、いつ、どんなことがきっかけで乃木がFと“同居”することになったのかは詳細には描かれなかった。その点は興味がそそられるところである。 ■まだ秘密がありそうな野崎 乃木はバルカの砂漠で倒れてしまった時、アディエル(ツァシケルハタンゾリク)とジャミーン(ナンディン・エルデネ・ホンゴルズル)という親子に助けられている。ジャミーンが抱えている病気を長年治療してきた薫(二階堂ふみ)によると、彼女には人の善悪を直観的に見抜くことができる能力があるという。乃木はそんなジャミーンに初対面の時から懐かれていた。 その一方で、バルカでは乃木とコンビのように活躍した野崎(阿部寛)は、何度かジャミーンと対面するがいつも戸惑った顔をされるばかりだ。最終的に乃木から絶大な信頼を寄せられた野崎だが、まだ隠された顔があってもおかしくない。さらに乃木をなんだか放って置けない理由として、「後輩だったリュウミンシュエンに似ているから」と言っているが、その人物に関することはそれ以上わからなかった。はっきりと名前が出てきたため、どうしてもその人が何らかの鍵を握っているのではないかと疑ってしまう。野崎の過去にも重要なエピソードが残っているような気がしてならない。 ■確信の持てないベキの死 テントの本来の姿やベキ(役所広司)の真の目的が次第に明らかになっていった後半。最終回でベキは仲間数人と襲撃した内閣官房副長官・上原(橋爪功)の家で乃木に撃たれ、そのまま上原の自宅と共に燃やされた。しかし、野崎は「スス同然となって発見された」と言っているがその亡骸は回収されてはいない。乃木は、以前、別班を裏切ったように見せるために、任務仲間であった4人を撃ったことがあるが、その時はわざと急所を外して生かしていた。ということは、同じことをベキたちにもできたということである。状況からしてベキが死んでいると考えるのは自然だが、本当にそうなのかはまだ疑わしい。 ■日本にいるモニター テントは各国に潜伏する工作員であるモニターを使って情報を集めていた。乃木の同僚である黒須(松坂桃李)は世界で暗躍する凄腕ハッカーであった太田(飯沼愛)を使って日本に潜伏するモニターを洗い出していた。その中で、野崎の部下の1人がモニターであることが判明するのだが、映し出されるモニターとの通信履歴には「JAPAN」のIDが3つあるのである。今回、ベキに協力した1人を除くと、あと2人はいまだに正体が不明である。これはまだ何かがあるという暗示にはならないのだろうか。 ここまで残っている謎について考えてしまうのには、理由がある。ベキ関連の長い任務を終えた乃木は、近所の神田明神に帰還し、帰りを待っていた薫とジャミーンに迎えられ抱き合う。しかし、Fから「別班の緊急招集の合図」である、祠にお饅頭が備えてあることを教えられるのだ。明らかに続編があることを感じさせる結末なのである。 乃木を演じた堺も「何かの形でまた乃木という人物を演じてみたい」とコメントを寄せているが、俳優から見ても本作の登場人物たちはまだまだ奥が深いようだ。今のところ発表されていないが、続編に期待して未回収の謎を見つけてみるのもおもしろさのひとつではないだろうか。
久保田ひかる