『ブギウギ』小夜の“愛され下手”な一面を好演 富田望生は常に“驚き”をもたらす俳優だ
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』で、スズ子(趣里)のことを支えながらも引っ掻き回す、憎めない存在として描かれるのが小夜(富田望生)だ。 【写真】サム(ジャック・ケネディ)に手を握られる小夜(富田望生) 一生懸命で心根が優しいのは間違いないが、どこか享楽的な部分や危なっかしさがあり、あれだけ元気で明るいものの常に“自分の居場所”に飢えているようなところがある。 小夜役を演じる富田は『なつぞら』(NHK総合)に続き本作が朝ドラ出演2作目となる。『なつぞら』ではヒロイン・なつ(広瀬すず)の親友・良子役を好演し、同じ演劇部の部員として青春を謳歌した。富田は広瀬と映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』でも共演しており、ここではチアリーダー部が舞台となった。 富田は「ヒロインの親友役」として確かな存在感がある。『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)での苺(小芝風花)の親友・桃子も印象深い役だった。何とも豪快な食いっぷりと、苺の窮地を助けにきてくれる際の俊敏さの双方をリズミカルかつコミカルに演じ、ドラマの世界観を支える見事な立役者ぶりが光っていた。 そして“好き”に一直線で猪突猛進な役どころも、『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)でクラスメイトに好意を寄せる柔道部の華役や、『ナンバMG5』(フジテレビ系)で主演の間宮祥太朗演じる剛に猛アピールする巻役などで圧倒的な熱量を担っていた。 『宇宙を駆けるよだか』(Netflix)での海根然子役では、家庭環境に恵まれず、家にも学校にも居場所がなく疎まれっぱなしのいじめられっ子役を演じ、さらには主人公・あゆみ(清原果耶)との魂の入れ替わりまで描かれるかなりの難役を務めた。 そして最近もっとも話題になった役は、『だが、情熱はある』(日本テレビ系)で演じた南海キャンディーズ・“しずちゃん”こと山崎静代役だろう。しずちゃんの独特な間合いや本心が読めないポーカーフェイスぶり、一定のテンションが、前のめりに矢継ぎ早に話す相方・山里亮太(森本慎太郎/SixTONES)との対比を際立たせていた。山ちゃんのペースにも乱されずにボソッと発するしずちゃんの一言のシュールさなど、しずちゃんの特徴はもちろんのことコンビとしてのグルーヴ感をそのまま体現しており、驚愕させられた。 『ブギウギ』での小夜の目まぐるしく変わる感情は忙しい。米兵のサム(ジャック・ケネディ)に捨てられたと人目も憚らずおいおい泣き出したかと思いきや、それは彼女の早とちりで結婚の申し出を受けると信じられないという表情で急に黙り込んでしまう。家族に捨てられた過去を持つ小夜が片やサムに求婚され、スズ子からはアメリカになんて行かずにまた一緒に楽しくやろうと提案を受け、自分を求めてくれる人からの気持ちの渋滞に本人が誰より混乱してしまう。あれだけ愛され力の高い小夜の“愛され下手”な一面も、そのちぐはぐさゆえの人間臭さも富田は丁寧に見せてくれた。 小夜は一体どんな道を選ぶのか。彼女が踏み出す一歩を応援しながら見守りたい。
佳香(かこ)