ナタリー・ポートマン演じる衝撃作にフェミニストスリラー。2024夏に見たい映画3選
◇『HOW TO HAVE SEX』(7月19日公開) イギリスの女子高生を等身大に描いた、モリ―・マニング・ウォーカー長編監督デビュー作。 イギリスからギリシャのクレタ島にやって来た女子3人組のホリデーを追う。バッチリお化粧して、派手なドレスに身を包み、クラブへと繰り出す姿はパリピそのものだが、その実、主人公はホリデーでのヴァージン卒業を目論むティーンエージャー、日本で言えば女子高生だ。 進路に影響する試験の結果に一喜一憂したり、男子グループとのあいだで、それぞれ誰をゲットするか、ちょっとしたつばぜり合いが繰り広げられもする。 ご当地イギリスでは、性的同意についても話題になった。女子がやんわりノーと言い続けているのに、男子に押し切られる場面に関してだ。同じ年頃の若い男女なので、男子にとっては成功したナンパ、女子にとっては黒歴史くらいになるのかもしれないが、権力のある男性と新人女性あたりなら、パワハラ、セクハラになりそうだ。 爽やか一辺倒ではなく、苦み、痛みもあるリアルな青春像だが、ティーンらしい伸びやかさで、後味は良い。マニング・ウォーカー監督と主演のミア・マッケンナ=ブルースが数々の映画賞を受賞している。 ◇『ロイヤルホテル』(7月26日公開) 『アシスタント』で注目を集めたキティ・グリーン監督と、主演したジュリア・ガーナーが再タッグを組んだ作品。 『アシスタント』は、あるオフィスで女性社員が置かれた位置から、男社会をあぶりだす、小粒だがピリリと辛い作品だった。対する本作は、ジェシカ・ヘンウィッグを迎えてのW主演で、派手な場面もあり、中粒くらいになっている。 アメリカから来たバックパッカーのハンナ(ガーナ―)とリブ(ヘンウィッグ)は、オーストラリアでロイヤルホテルという名のパブで働きながら宿泊することになる。そのパブがヤバい。そして、そのヤバさが計りきれないのが怖い。 夜中にミシミシとパブ上階の宿泊所に上がって来るのは、単なる酔っ払いおじさんなのか、それともストーカー男なのか? くどきにかかってくるのは、ロマンチックな青年か、あるいは下半身に突き動かされた強引男か? 度の過ぎることもある酔っ払いとして、うまく相手をしていこうとするリブと、レイプされ殺されるくらいに恐れるハンナ、どちらが正解か? さらには、彼女たちを雇い、泊まる場所も提供したパブオーナーは善意の人か、悪の根源か? 女性が置かれた位置を考えさせるのは前作同様で、フェミニスト・スリラーとも呼ばれている。
山口 ゆかり