空のF1 日本初開催のエアレースで優勝を狙う室屋の秘密兵器
「エアレースの勝敗を左右するのは半分がマシンで半分がパイロットの技量。これまでのマシン(V2)では、風などでコンディションが荒れたり、パイロットの調子が狂うなどしなければ勝負になりませんでした。でも、この新しいマシンは、これまでに比べてストレートでの時速が30キロ違います。1秒から1.5秒早くなります。V3をさらにV3・5までに改良したことで、さらに0.5秒は速くなると思います。千葉のコースはストレートの距離が長く、速いレースになるので、ターンした後の加速で差をつけられると思っています。またターンについてもコントロール性が高く安定しています」 アメリカで一度テスト飛行を終えてきた室屋は、手ごたえを感じ取っている。 初開催となる日本で室屋が優勝を手にするための最大の武器が完成したが、問題は、ここから必要な微調整のためのテスト飛行時間が足りないこと。ニューマシンをアメリカから輸送してきてから、この数日間で「チーム室屋」のメカニックは、夜中の1時、2時まで突貫で組み立て作業を続けてきたが、この日予定されていたテスト飛行には間に合わなかった。カウリングの取り付けは、記者発表の30分前に終わったほど。 「正直に言えば焦っています。今後、データをとりこみながら、飛べるだけ飛んで、1年間戦うセットアップを終えねばなりません。幸い、日本でできているので、そこを利点と考えながら、なんとかプラン通りに行けると思っています。千葉までは、ここから45分で飛べますから」と室屋。国内開催の利点で、その課題を埋めたいという。 室屋は、2009年から世界を転戦するレッドブル・エアレースに参戦しているが、表彰台に上がったのは、2014年の第二戦、クロアチアで3位に入った一度だけ。まだ優勝の経験はない。もちろんホーム日本での優勝が目標ではあるが、室屋は、それを口には出さない。 「100パーセントのパフォーマンスを出すことが大切なんです。相対性の競技なので、結果としての順位は、女神がくれるもの。日本でやれるということで期待もされているし、応援が励みになる。それをチームのパワーにもしたい」 F1レーサー以上の高い判断力と集中力が求められるとされる究極のモータースポーツレース。重要なコース取りラインなどには、ハイテクの解析機器などが利用されていて、機体の整備も含めたチーム競技であるが、最後はパイロットの腕ひとつ。 「センスより経験。僕は20年乗っていますから」。プロの矜持を胸に、室屋は幕張の地で世界最高の称号を狙う。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社) ※近日中に室屋選手のTHEPAGE独占インタビューを掲載します。