【中国】隠れ債務圧縮で財政支出増、GDP押し上げ
地方政府が抱える「隠れ債務」の圧縮に向けた中央政府の動きは、経済の押し上げにつながるとの見方が出ている。銀河証券は、債務返済負担の減る地方政府がその分財政支出を増やすことで、国内総生産(GDP)を少なくとも0.76ポイント押し上げる効果を生み出すとの見方を示した。 界面新聞などが伝えた。銀河証券によると、向こう3年は毎年2兆元(約42兆5,200億円)を隠れ債務との借り換えに充てる計画で、地方政府の財政支出は少なくとも毎年1兆元増える見通し。金利負担の重い隠れ債務の借り換えに伴い、利払いが減った分を投資などに充てるとの見方だ。 銀河証券は、隠れ債務の圧縮が市場の流動性や市場見通しの改善にもつながると指摘。地方政府に対する企業の売掛金回収が速まることで、民間投資も拡大に向かうと見通した。民生証券は、利払い負担が軽減できれば、地方政府は今後、民生分野への投資を増やすとの見方を示した。 中信証券の明明首席エコノミストは、地方の財政圧力が大きく弱まることで、年末以降に地方の財政支出が拡大に向かい、企業の投資や市民の消費を押し上げる効果が出るとみている。東呉証券の陳李首席エコノミストも、財政支出の拡大が物価上昇につながると指摘した。 中国民間格付け機関である東方金誠国際信用評価は、地方政府がインフラ関連などの事業目的別に発行する「専項債券(レベニュー債)」の発行上限が拡大することを受け、年内の専項債の発行が1兆6,000億元増えると予測。地方債の発行拡大に対応するため、中国人民銀行(中央銀行)は、金融機関から強制的に預かる預金準備率を0.5ポイント引き下げ、約1兆元の資金を銀行に放出すると見通した。 全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は8日、隠れ債務の圧縮に今後5年間で計10兆元を投じる追加財政を承認。3年に分けて計6兆元の専項債を追加発行するほか、今年から5年間で発行する専項債のうちの計4兆元を合わせ、隠れ債務との借り換えを進める。