もはや和製エクスペンダブルズ!豪華キャストで綴られる、静かな絵画ロマン映画『海の沈黙』に、殴られた
【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】
「絵画ロマン映画」って、ジャンルがあるのかどうかもわからないんですが、結構ありません? 音楽とかダンスとかも、モチーフにした「ロマンス映画化」ありがち。 映画『海の沈黙』予告編動画 …大好物なんです! この作品は「贋作作家」を、中心に繰り広げられるミステリーというか人間ドラマというか、北の国からややすらぎの郷など名作を数々生み出された、巨匠倉本聰さんが、言葉を選ばずに言うと「89才にもなって、まだこんな引き出し残してたの!?」と、思うほど「お前ら、これが邦画だぞ」と、いう印象を受ける「骨太な邦画」。 邦画と洋画の区別は、ざっくり言えば作られた地域の話で終わってしまうんですが、もっと何か“空気”で、決まるところがあると思い、この作品はコメディやアクション、CGに逃げず(そういう作品が悪いと言っているワケではないですが)、ひたすら人間を撮ることへの執着を続ける。古き良き「邦画の空気」が、流れ続けます。 でも、飽きない。 なぜなら、画面に映っている人たちが、怪獣だらけだから! 本木雅弘さん! 中井貴一さん! 石坂浩二さん! 仲村トオルさん! 萩原聖人さん! 佐野史郎さん! 村田雄浩さん! 清水美砂さん! そして我らがキョンキョンこと小泉今日子さん!! これだけ、名優に揃われたらもう、和製エクスペンダブルズか、オーシャンズ11ですよ。 その重厚な軍団がゆっくりとスクリーンの向こうから、ずしんずしんと、まるで進行してくる様。静かなのに、観ているほうは心が踊り続ける、絵画や創作に対する想いを媒介にして繰り広げられる人間ドラマ。 「語らない部分」に、この作品の本質があるのかもしれません。ただ、これは「セリフ」の話であって、画面からは、めっちゃ語りかけてきます。 この作品、絵画の他に“入れ墨”も、モチーフとして出てきます。筆者は、入れ墨に対してアートやファッションとしては肯定的なのですが、2020年頃かな? 最高裁で「医療行為に当たらないので、違法ではない」と判断されるまでは、彫る行為自体が医療行為に当たるのであれば、医師免許のない人間が行うのは違法という解釈がされていたので、まだちょっと抵抗が残っていて、善し悪しとか合法違法じゃなくて「楽しめるかな?」と思っていたのですが、とても綺麗に描かれ、ラストの落とし所も実に美しかった。 「濃厚な邦画」に、飢えている皆様、是非劇場で、御覧ください。