協調性を重んじる日本の教育は、本当に「問題だらけ」?映画『小学校~それは小さな社会~』監督インタビュー
教員の長時間労働や、人手不足。集団行動や協調性を重んじるがあまり、子どもたちから個性を消してしまう―。日本の教育現場をめぐって、近年、たくさんの問題が指摘されている。 【画像】山崎エマ監督 でも、本当に「問題だらけ」なのだろうか? 世田谷区立の小学校を1年間取材したドキュメンタリー映画『小学校~それは小さな社会~』は、そんな問いを私たちに突きつけてくる。 掃除や給食の配膳などを子どもたち自身が行なう教育方式は、じつは世界的にもめずらしく、海外では「TOKKATSU(特別活動)」と呼ばれ注目を集めている。 そんな特別活動に注目し、日本の教育を新しい視点で切り取ることを試みたのが、本作で監督を務めた山崎エマだ。イギリス人の父と日本人の母を持ち、日本で教育を受け、現在は日本とニューヨークの二拠点で暮らしている。山崎が日本を離れることで発見したことや、作品をとおして伝えたいことは何なのか。インタビューで聞いた。
息苦しい日本を出てから、「日本のいいところ」に気づいた
―高校卒業まで日本で育った山崎さんは、規則だらけの日本に息苦しさを感じていたと聞きました。どんな場面で息苦しく感じていましたか? 山崎エマ(以下、山崎):みんなと一緒でいたいのに、父がイギリス人で英語を話せることが良くも悪くも目立ってしまい、それが疲れるみたいな感じでした。子どもの世界ってすごく狭いと思うんですが、「ハーフなの?」とか「英語喋れるの?」とか、いろいろ聞かれるんですよね。1度聞かれるならまだしも、千回くらいそのやりとりをしていると嫌になってしまうんです。だから英語を喋れることは自分にとって強みでもなんでもなく、欠点でしかなかったんです。 ―そうだったんですね……。学校生活自体は楽しめていたのでしょうか? 山崎:小学校で私は唯一の「ハーフ」だったのですが、高学年のころには自分の居場所を見つられるようになり、中学からはインターナショナルスクールに通いました。友達もたくさんいたし、生徒会長とか応援団長を総なめするくらい行事ごとが大好きでしたね。 でもインターに通いつつ、住んでいるのは日本だから、電車に乗っていると学校とは違う世界が広がっている。日本社会との交流はつねにありました。なので、自分の住んでいる国の良さにはまったく気づかず、旅行で海外に行って世界の広さを思い知り、ただ「出たい」という思いを強くしていましたね。