美肌のために「とんこつラーメン」を食べると効果はあるのか、スープ内の「コラーゲン」はどうなるのか?
肌の「うるおい」「透明感」とは何か? どうして何種類も液体をつけるのか? ――。 こうしたスキンケアの疑問に、独自の高級化粧品を研究・開発してきた尾池哲郎氏が新著『美容の科学』で科学の視点から答えています。 本稿では、同書より一部を抜粋しお届けします。 ■キメを支える膨張力 自然界では新鮮なフルーツの皮などにも整ったキメが見られますが、もっともよく目にするのは新しいシーツ、印刷用紙といった工業用品のキメです。工業用品は均質な原材料で高速に量産するため、均質性が現れやすくなります。
そのように考えていたとき、ふと、量産品なのにキメが整っていないものがあることに気が付きました。それは、おもちゃの風船です。店頭で買う風船は袋の中ではしぼんでいます。その表面はなんだかごわごわしていてキメが整っているとは言えません。しかし膨らませると、とたんに、きれいなキメの整った肌が現れます。これは購入時の風船がもっとも縮んだ状態であるため、均質性が見えにくくなっているからです。膨らませると、もともとの均質性が分かりやすくなります。
これは人の肌にも同じことが言えます。生まれたばかりの赤ちゃんの肌や若いころの肌は、肌の内部に十分な水分やコラーゲンといった成分が整っているため、ちょうど風船がほどよく膨らんだ時と同じ状態になっています。しかし肌内部がしぼんでしまうと、均質性をまだ有しているにもかかわらず、キメが分かりにくくなってしまいます。これを肌の「菲薄化(ひはくか)」と呼びます。 肌のキメと風船の関係はとても興味深く、キメがけっして肌表面だけの問題ではなく、肌内部の圧力(肌の内圧)が直接的にかかわっていることが分かります。そこで肌内部を膨らませるために水分やコラーゲン、セラミドといった保湿成分が欲しくなります。
■キメとラーメンに見る最先端美容 コラーゲンたっぷりな料理はいくつかありますが、とんこつラーメンもコラーゲン豊富なメニューとして紹介されることがあります。しかしここで、学者の間でよく言われる「コラーゲンの不都合な真実」があります。それは、ラーメンなどに含まれているコラーゲンが、そのまま肌のコラーゲンになるわけではない、という事実です。 人の栄養の吸収は鉄壁のバリヤーで守られています。食べたラーメンのスープに含まれるコラーゲンや脂質は、唾液の酵素や、胃酸によって次々と分解され、アミノ酸や低分子の脂肪にまで分解されてからようやく腸壁から吸収されます。そこにはコラーゲンのような巨大な分子がそのまま体内に吸収されるようなルートはありません。もしそのような大きな穴(欠陥)がどこかにあれば、ウイルスも侵入してきます。