「なんとなく吹き抜けがほしい」その願望がマイホームをダメにする!
---------- 人生でいちばん高価な買い物、マイホームをせっかく建てたのに、「こんなはずじゃなかった」と後悔する人があまりに多いのはなぜなのか? 気鋭の建築家・内山里江氏は言います。 「日本人が家づくりに失敗する最大の理由は、たとえば『家は南向きじゃなきゃダメ』とか『窓は大きいほうがいい』といった『間違った常識』によるものです。私は本書でそうした間違った常識をすべてひっくり返します」 内山氏の最新刊『家は南向きじゃなくていい』から、間違いだらけの家づくりをしないための方法を連載形式でお届けします。 【前編はこちら】階段は単なる上下の移動通路じゃない! 新築のとき「階段」にはこだわったほうがいいワケ ---------- 新築のとき「階段」にはこだわったほうがいいワケ
吹き抜けを「なんとなく」つくると失敗する
ちなみに、階段をつくると上下階を貫く空間が生まれるため、必然的に吹き抜けができます。吹き抜けに憧れを抱く人は一定数いらっしゃり、「ぜひ吹き抜けを」とリクエストする人は多いですが、あえて特別に設計しなくても階段をうまく利用すれば広がりのある空間が実現できるのです。 いずれにしろ、せっかくスペースを使って階段をつくるのであれば、その空間を最大限に有効活用したいものです。もちろん、豪華な螺旋階段などをつくらなくても素敵な吹き抜けはつくれます。 ちなみに、土地の形状や周辺環境によって、上の階から明るさを取り込む必要がある場合に吹き抜けをつくることもあります。あるいは、お子さんがいらっしゃるなど、上下階のどちらにいても家全体の気配を感じたい場合に家全体のつながりを演出することもできます。「開放感がありそう」「なんとなくの憧れ」でリクエストされる人も多い吹き抜けですが、実用的な利点もたくさんあるのです。
吹き抜けが残念な結果になることも
吹き抜けに限った話ではありませんが、ライフスタイルと要望に応じて、適切な位置と規模で希望を実現することが大事です。単なる憧れ以上の意味を持たない吹き抜けは、スペースとお金の無駄遣いになることもあります。 1億円をかけて「こんなはずじゃなかった」家を建ててしまった男性のおうちにも実は吹き抜けがあるそうです。ところが、「まったく心躍る吹き抜けではなかった」そうで……。ただ設けるだけで明確な意図がなければ、残念な結果になることもあるのです。 開放感を演出する方法は吹き抜けだけではないことも頭に入れておくと、無意味な空間をつくらずにすむはずです。
内山 里江(一級建築士 株式会社コモドデザイン代表)