まだサステナブルに ゴルフをしないのですか? ゴルフ界とゴルファーに求められること
まだサステナブルに ゴルフをしないのですか? ゴルフ界とゴルファーに求められること
世界的な異常気象にパンデミック。地球規模で環境への意識が高まるなか、自然が相手のスポーツであるゴルが無関係であるはずがない。ゴルフを持続可能にする取り組みやアイテムを知り、サステナブルなゴルファーであることはプレーヤーとしての最低限のマナーだろう。ここではサステナブルなゴルフとはなんたるかを、ゴルフアクティビストの大矢隆司氏に説明いただいた。 ※この記事は2022年7月5日発売の「EVEN2022年8月号」掲載の内容を一部加筆・修正したものです。
ゴルフ活動家、大矢隆司
15才で豪州へゴルフ留学。帰国後大学在学中にゴルフコーチに転向し起業、40歳までゴルフレッスン会社を経営しながらMBAを取得。現在は国内ゴルフ場、ゴルフ会員権販売企業の顧問に講演業務など幅広く活動している。
ゴルフを持続可能にするために
スポーツのなかでもなぜゴルフばかりがサステナブルを声高に訴える必要があるのか。まずはゴルフ活動家の大矢氏に解説してもらった。 「ゴルフ界がサステナブルを進める背景には、世界的なコンセンサスが起点にあります。1980年代以降生まれの若い世代が世界人口の6割を占める中で、大型ハリケーンの被害や干ばつによる食糧危機などに対し、その世代の環境意識は非常に高い。彼らの支持を獲得するため、世界の政治が環境問題解決に向けて動きだすと、当然、ビジネスの起点となる投資も環境問題へのスタンスが明確な企業に集まっていく。ゴルフ界がサステナブルを標榜する背景には、そうしなければ社会の一員として認められず、人やお金が集まらないから、という背景があるのです。 ただし、ゴルフ場運営はサスティナビリティと深く関わる面もあります。クラブハウスは冷暖房や照明などの電気を使いますし、コース管理では重機のガソリンや大量の水を消費します。そうした環境への配慮から近年のゴルフ場では芝刈りや散水を必要としないウェストエリア(waste area=荒れ果てたという意味)を設けることで、エコとデザインを両立もはかられています。 本来の自然環境に近いウェストエリアのようなネイティブエリアには花粉媒介者となる昆虫なども生息し、生物多様性にも繋がります。日本のゴルフコースではボールがなくなると敬遠されがちですが、こうした取り組みが環境への負荷を減らしていくことをゴルファーには意外と知られていない事実です。また、現在日本の多くのゴルフ場で大規模な伐採が行われているのですが、これは日本のコース新設ラッシュだった80年代に植えられた木が成長して、木の根がカート道を持ち上げたり、風通しや日照に悪影響を与えるなどの問題が発生しているためです。それらを伐採することで風通しや水はけがよくなり、芝の育成が良好となりコース環境が改善されエコにもなる。 また、木が密集していると根が邪魔になるため、プレイヤーはレイアップを余儀なくされ、プレーヤビリティの低下も招きます。『川奈ホテルGC』や今年関西オープンを開催した『よみうりCC』も、樹木の伐採でコースの評価を上げています。全米オープン開催コースであるドナルド・ロス設計の『パインハーストGC』も、ベン・クレンショーがコース改修で、木を伐採してネイティブグラスやウェイストエリアを新設しました。当初はメンバーから不満が多く聞かれたと言いますがその後の評価はご存知の通りです。日本には樹木信仰があり、伐採をネガティブに捉えがちですが、一方でそれらは、サステナブルなコース運営の負担になる場合もあるのです。ゴルフ場は現在、里山として環境にも寄与していると言われます。そうした側面があるのは確かですが、あくまでゴルフ場は運動場や公園としての機能が優先です。ゴルフ場の維持にはコストがかかります。また、プレーヤーの満足が低ければコースを保全していく費用も捻出できないのです」。