中国の締め出し?それとも…米国「TikTok禁止法案」が、実は「最重要事案」と言えるワケ
最重要事案のひとつ
2024年3月13日、アメリカ連邦議会下院で、TikTokに対してアメリカ資本の企業に生まれ変わるよう求める法案が、352対65の圧倒的多数で可決された。 【写真】在日中国人が「経済が発展しても中国に帰る気になれない」と語る納得の理由 近年、連邦議会は、共和党と民主党がほぼ半々の議席を占め、全く歩み寄る余地のない分断された状態が続いていた。そのため、むしろ稀に見る超党派の圧倒的支持で下院を通過したこと自体、ひとつのニュースだった。法案を検討した下院のエネルギー・商業委員会でも、全会一致の賛成50票で本会議の採決にまわされた。分断はどこ吹く風、と思いたくなってしまうほどの結束ぶりだ。 面白いのは、下院で反対票を投じた中に、MTG(マージョリー・テイラー・グリーン)とAOC(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)の名が見られたこと。図らずも、極右(MAGA)と極左(民主社会主義)が共闘した形になる。いずれもトランプ以後に当選した議員である。原理原則に頑なに拘る人が、政治的主張のスペクトルで左右の両極を占めていることを実感させられた。妥協を許さない過激な人たちである。 下院を危なげなく通過したこの法案は、次のステップとして上院での検討が待っている。バイデン大統領もすでに下院の法案の支持を表明しており、上院を通過すれば即座に法として成立する見込みだ。 もっとも、上院での議論はもう少し難航しそうだ。リバタリアン筆頭のランド・ポール上院議員を中心に、「表現の自由」の観点からの強硬な批判が予想され、より慎重な議論が展開されることだろう。今度はリバタリアンという原理原則主義者の登場だ。3月31日がイースター(復活祭)だったということもあり、上院での本格的な検討は3月中には始まらなかったが、4月以降の最重要事案の一つであることは間違いない。オンライン規制の問題、対中国の外交問題、国内の安全保障の問題、そしてユーザーであるアメリカ市民の自由の問題と、本件を巡る争点は、現代のアメリカ社会が抱える課題を色濃く反映したものばかりだ。 件の法案は、TikTokに対して、その資本関係を見直し、アメリカ資本の企業に変わるなら事業の継続を認めるが、現状の中国資本のままならアメリカでの営業を禁じるというものだ。つまり、TikTokの親会社であるByteDanceに対して、TikTokの株式をアメリカ資本の企業に売却・譲渡せよ、と迫るものである。 理由は大きく2つの懸念から発している。