開幕迫る「大阪・関西万博」 注目の新技術が目白押し 空飛ぶクルマは無人での飛行に
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開幕まであと100日あまり。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに半年間にわたり開かれる祭典では、次世代のモビリティと結びつく新技術も数多く披露される。半面、期待された「空飛ぶクルマ」は乗客を乗せず飛ぶことに。会場への輸送対策などへの懸念も拭えないままだが、こうした逆風をはねのけ、進歩への道筋を示すことが期待される。 万博を足掛かりとした社会実装が期待されるのが、通信やエネルギーインフラなどの新技術だ。通信領域ではNTTグループが低消費電力・大容量高品質・低遅延な次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」で会場内の各施設を結び、従来は難しかった豊富なコンテンツ体験の提供を支える。NTTはパナソニックグループと連携し、会場内のエネルギー供給も担う。太陽光発電由来の〝グリーン水素〟をパビリオンで用いたり、燃料電池を経由して電力を生み出したりと、製造から利用までのサイクルを通じ、水素の活用可能性を実証する。 エネルギー分野では「ペロブスカイト太陽電池」も脚光を浴びる。薄型・軽量で折り曲げ耐性にも優れ、〝次世代の太陽電池〟と期待されるこの技術は開発が佳境に差し掛かかり、電気自動車(EV)の車体に貼り付けるなどの用途も期待される。万博では積水化学工業がフィルム型電池を提供し、バスターミナルの屋根に約250㍍にわたって設置する。公共空間での導入としては、これまでに例のない規模だ。 近未来の基盤技術が陽の目を見る半面、モビリティの将来像は〝視界不良〟だ。とりわけ目玉として喧伝されてきた空飛ぶクルマは、型式証明手続きの難航なども響き、商用運航を目指していた4者全てが計画を撤回した。デモ飛行などは行われるが、来場者が上空から木造の大屋根リングを眺めることはできなくなった。 円滑なイベント運営に不可欠な会場の輸送対策でも懸念が残る。主要駅などと会場の夢洲地区(大阪市此花区)を結ぶシャトルバスの輸送量は1日当たり3.5万人と見込まれていた。しかし、全国的なバス運転手の不足を受けて計画は下方修正を重ね、最終案では2.6万人と25%近くも削減された。この減少分は鉄道(大阪メトロ中央線)に振り向けられるものの、地元企業などからは不安の声があがる。大阪府市や万博協会は交通需要マネジメント(TDM)を活用して利用の抑制や分散を促す考えだが強制力はなく、実効性は不透明だ。 とはいえ、三菱自動車や三菱ふそうトラック・バス、西日本三菱自動車販売なども加わる三菱グループが「三菱未来館」を構えるほか、住友電気工業や住友ゴム工業などを擁する住友グループも「住友館」を設けるなど、自動車関連企業も多く加わる大阪・関西万博。モビリティを含めた未来像を世界中の人々に発信する好機となりそうだ。