老後資金2000万円が数年で140万円に? 森永卓郎氏が「二度と手を出すな」と言い切る新NISAの落とし穴
預貯金を抱え続けるしかない
お金が自動的に増えることはない。そして、お金が増えるのは、働いたときと、他人から略奪したときだけだ。 略奪は、3パターンだ。 (1)幸運に恵まれてギャンブルに勝つ (2)他人をだまして奪う (3)胴元になる つまり、お金を安定して増やそうと思えば、詐欺師になるか、金融業者になるしかないのだ。いまの日本で個人が金融業者となるのは極めて難しいし、詐欺師になるのは犯罪だ。 だから、庶民は、余計な誘惑にかられることなく、じっと預貯金を抱え続けるしかないのだ。 その意味で、私は長年の友人であり、数多くの仕事を一緒にやってきた経済ジャーナリストの荻原博子氏をいまあらためて尊敬の眼差しで見ている。 彼女は、この数十年間、「投資なんてしてはダメ。キャッシュよ」と言い続けてきた。私はそんな彼女を揶揄して、親愛の念を込め、「キャッシー荻原」と呼んできた。 1つ付け加えておくと、荻原氏は「投資のリスクを取ってはいけない」と言いながら、自分では一部の資金を株式投資に回している。それはあくまでも射幸性を楽しむための純粋なギャンブルとしてやっていることで、資産を増やす運用としてやっているわけではない。 そうした〝二刀流〟は、荻原氏の高度な専門知識と強い意志が可能にしているもので、一般の人が真似をすることは絶対にお勧めしない。 ちょっとでも投資を残していると、そこからまた「投資依存症」が広がってしまうからだ。 たとえば、アルコール依存症から脱却するためには、アルコールを完全に断つことが必要で、少しでも飲酒の習慣を残していると、そこからまた依存症が拡大してしまうのだ。 写真/shutterstock
---------- 森永卓郎(もりなが たくろう) 1957年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。経済企画庁総合計画局、三井情報開発(株)総合研究所、(株)UFJ総合研究所を経て、獨協大学経済学部教授。専門は労働経済学と計量経済学。堅苦しい経済学をわかりやすい語り口で説くことに定評があり、執筆活動のほかにテレビ・ラジオでも活躍中。2023年12月、ステージ4のがん告知を受ける。 ----------
森永卓郎