ウクライナ情勢の「現状維持」を望む中国の思惑
戦略科学者の中川コージが2月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国の今後の外交リソースについて解説した。
中国の王毅外相がロシアへ武器を売却しないと述べる
中国の王毅共産党政治局員兼外相は2月17日、訪問先のドイツでウクライナのクレバ外相と会談し、ロシアによるウクライナ侵攻を協議した。中国は紛争地域や当事者に殺傷力のある武器を売却しないと伝えた。 飯田)王毅外相はミュンヘン安全保障会議に出席しており、そのタイミングに合わせて行われました。
ウクライナ情勢は現状が維持された方が欧米の外交資源を削ぐことができ、中国にとって得
中川)時事通信の記事を見ると、このように書かれています。 ―– 『王氏は会談で、紛争解決へ向けた「対話」促進を訴え、中国は早期停戦のために「建設的な役割」を果たし続けると伝えた』 ~『時事通信』2024年2月19日配信記事 より ―– 中川)しかし、他の報道では、「和平交渉はこのタイミングではない」ということを強調しているのです。そのように重きが置かれているということは、従前通り、中国としては諸外国、特に米国や欧州諸国がウクライナ情勢に外交資源を取られてくれた方がいい。むしろ和平を目指すよりも、「現状が維持された方が得だ」と天秤にかけた上で考えているのです。 飯田)なるほど。 中川)これはもともとやっていたことです。和平に傾くのか、もしくはミスリーディング戦略、つまり他国の外交リソースを消耗させるなど、どちらに転んでもいい形にしていました。少なくとも現状では、まだ和平よりも他国の外交リソースを削いだ方がいいという考えになるので、決して「自分たちでは和平の話はできないから」というだけではないのです。もちろん、できるかできないかで言えば、まだ中国にできないのは間違いありませんが、消極的理由よりも、積極的に和平を目指す方針ではないのだと思います。
北朝鮮の武器売却によってロシアから軍事技術が入ることを中国が許す理由
飯田)ロシアへの武器売却というと、北朝鮮が武器を相当売却しているという話があります。中国がこのような姿勢を示すことで、北にも「お前らもやめろよ」という形になるのでしょうか? 中川)ロシアから北朝鮮に対し、軍事的な技術が入るのを中国はよしとしません。軍事技術が上がれば、北朝鮮の対北京に関する交渉力が上がってしまいます。小型狂犬が大型狂犬化してしまうので、それはやめて欲しい。一方で、その方が対日・対米の関係において、台湾と北に関する両方のリソースを削げることになります。 飯田)二正面作戦を強いることができる。