「歩んできた道が間違いじゃなかった」今年で引退“タケノコ王”が考えるこれからの農業【現場から、】
静岡放送
テレビのバラエティ番組などで「タケノコ王」と呼ばれ、全国的な人気者になった静岡県富士宮市のタケノコ農家・風岡直宏さん。いま、最後の収穫シーズンを迎えていますが、引退に対する想い、そして、農業を取り巻く厳しい現実を語りました。 【写真を見る】「歩んできた道が間違いじゃなかった」今年で引退“タケノコ王”が考えるこれからの農業【現場から、】 富士宮市にある直売所「風岡たけのこ園」。店頭に立つのは「タケノコ王」と呼ばれ全国的な人気者となったタケノコ農家・風岡直宏さん。トレードマークだった髪の毛をバッサリ切り、口にしたのは、謝罪の言葉でした。 <タケノコ王 風岡直宏さん> 「2025年までやると言っていたのに(卸している)飲食店にしても、早く辞めたら迷惑がかかるじゃないですか。農家にも守らなきゃならない筋だったり、道理があるんですよね。そういう反省の思いを込めて、今年は坊主にしたんですよ。タケノコシーズン」 <タケノコ王 風岡直宏さん> 「2025年で引退すると言っていましたが、24年、つまり今年でタケノコ王の直売所を閉店します。今までありがとうございました」 2024年1月、引退時期を1年早めると発表した風岡さん。今年が最後のシーズンです。風岡さんは富士宮市と山梨県にある竹林でタケノコを育てる生活を、23年間続けてきました。1年で300日は山に入り、5,000坪もある急勾配の竹林で手入れや収穫を行います。 23年間の厳しい作業で風岡さんの右足首は限界を迎え、これ以上、仕事の継続は困難になりました。また、需要低迷によるタケノコ価格の下落も影響し、タケノコ農家を廃業することを決めました。 <タケノコ王 風岡直宏さん> 「経済的にも経営的にも悪いんですけど、身体のことを考えたらもう今年でも引退が遅すぎるというのが正直なところなんですよ」 タケノコ農家を「絶滅危惧職」と表現する風岡さんですが、タケノコだけでなく、農業業界全体の将来を危惧します。 <タケノコ王 風岡直宏さん> 「(今後) 完全に個人の農家、専業農家は少なくなりますよ。ものすごい勢いで少なくなるんじゃないですか。やはり稼げないっていう理由ですよね。きつい割に収入は少ない。こんな地道な作業でこんだけのお金にしかなんないんだって」 最後のタケノコシーズンを迎える中、常連客からは惜しむ声があがりました。 <浜松から来た客> 「寂しいですね」 「もう食べられなくなると思うとやっぱりね。まだまだ通わないといけない」 <神奈川から来た客> 「もったいないですね。残念です」