<日本版NSC>安倍政権が創設目指す「国家安全保障会議」って何?
政府は6月7日、「国家安全保障会議(日本版NSC)」の関連法案を閣議決定しました。安倍政権は参院選後の臨時国会での成立を目指しています。「日本版NSC」とは、どういうものでしょうか? 日本版NSCとは、外交や安全保障に関する情報収集や分析の態勢を強化するとともに、首相が少人数の関係閣僚と機動的な議論、迅速な意思決定を行うことを目指した組織機構で、これからの日本の外交・安全保障政策の司令塔となるものといわれています。 現在も「安全保障会議」は存在しますが、これは主に国防について議論する場で、外交も含めた対外政策を広く決定する場にはなっていません。 実は、NSC設置法案は2007年、第一次安倍政権のもとでも提出されていました。しかし同年7月の参院選で自民党が惨敗した後に安倍首相が退陣し、廃案となっています。その論議がここに来て再び復活しようとしている背景には、今年1月にアルジェリアで起きた人質事件や、北朝鮮によるミサイル発射・核実験、中国による尖閣諸島への圧力など、日本と日本国民の安全保障を脅かす出来事が増えているためといわれています。
「縦割り」打破を目指す
特にアルジェリア人質事件では、「各省庁の縦割りが原因となって首相への報告が遅れ、十分な情報集約もできなかった」(MSN産経ニュース2/16)といわれています。ここで指摘されているように、いまの日本で対外政策を行う機構は、外交は外務省、国防は防衛省などと「縦割り」の状態になっています。そして、これらの縦割り機構を総括して情報収拾をしたりするようなポストや事務局もありません。 こうした非効率な機構を改めて対外政策決定の一元化を行い、同時に対外政策に関する首相リーダーシップの向上を図る目的で、日本版NSCは作られようとしています。 日本版NSCのモデルは、アメリカの「National Security Council(国家安全保障会議)」です。そこでは大統領のもと、国務長官、国防長官など外交、国防のトップや、大統領補佐官ほか関係官僚が集まり、対外政策に関する戦略や対応を一元的に議論しているとされています。 日本版NSCは、首相と官房長官、外務大臣、防衛大臣の4名によるコンパクトな機構で月1~2回会合を開き、官邸主導で外交・安保政策を立案します。テロや災害などの緊急事態では、状況に応じて参集する閣僚をあらかじめ指定します。また、事務局を内閣官房に置き、必要な情報提供を関係省庁に義務付けることで、各省庁が情報を独占して共有が進まないといった弊害を打破することを目指しています。