東京電力福島第１原発事故の影響で休止している福島県立大野病院（大熊町）の後継病院の経営形態について、県は２９日、福島医大の付属病院として整備を検討すると明らかにした。開院に向けて医師確保が課題で、医大と一体化して人材を安定的に配置できると判断した。今後、医大に申し入れ、年度内に結論を得たい考え。その後具体的な協議に入り、２０２９（令和１１）年度以降の開院を目指す。避難住民から被災地の医療体制の強化を求める声があり、県は高度医療を提供できる拠点の開設で住民の帰還を後押しする。 　同日、県庁で開かれた県立病院改革推進部会で示した。被災地の中核病院としての医療機能を維持できる経営形態の方向性を協議。従来のまま県立で運営する方式や指定管理者に運営を委ねる方式などと比較した結果、医師の安定的な確保、研究環境の充実などの観点から福島医大の付属病院化が「最適」と評価した。廃炉作業が続く中、原子力災害医療の拠点としての機能も重視した。

　双葉郡は原発事故発生前から慢性的な医師不足が続いており、大野病院は休止中の双葉厚生病院（双葉町）と経営統合される予定だった。原発事故発生前、人材確保が課題だったため、福島医大と一体で医師を配置できる付属病院化での検討を進める。 　実現すれば福島市の医大付属病院、会津若松市の会津医療センター付属病院に次いで３例目となる。ただ、付属病院の機能や運営費の試算、職員の待遇など検討すべき点は多い。医大が必要な人員を集められるかも課題になる。 　県の基本構想によると、後継病院は現在地で建て替える。内科や外科、人工透析（腎臓内科）、産婦人科など２０診療科を備える方針。病床数は開院時１００床前後で、人口動向などを踏まえて段階的に２５０床前後に増やす計画だ。 　復興庁と県、被災市町村による住民意向調査で、双葉郡の避難住民の多くが帰還の必要条件に医療機関の復旧や拡充を挙げており、首長らからも早期開院を望む声が上がっている。付属病院化の方針が示され、大熊町健康保険課は「安定的に医師が確保できるようになればありがたい」としている。双葉町には診療所があるが、内科のみで体制の充実が課題。町健康福祉課は「帰還や移住の促進にもつながる」と期待を込めた。