尾上菊之助、8代目菊五郎襲名で團菊新時代築く…盟友・市川團十郎と「スクラムを組んでやっていきたい」
8代目尾上菊五郎を襲名する尾上菊之助(46)は27日の会見で、お互いに歌舞伎の名門に生まれた御曹司として幼少期から切磋琢磨(せっさたくま)してきた市川團十郎(46)との共闘を誓った。前日(26日)に千秋楽を迎えた歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」でも共演した盟友に「13代目團十郎さんと、スクラムを組んでやっていきたい」とメッセージ。團菊新時代を築く決意を表明した。 昨年4月、父に8代目菊五郎襲名を打診されてから約1年。菊之助は、はやる気持ちを抑えるように、努めて落ち着いた口調で「歴代の菊五郎は名優がそろっていますので、プレッシャーはあります。菊五郎という名前に見合うように、精進、研鑽(けんさん)を積んでいく所存でございます」と思いを込めた。 菊之助と團十郎は1977年生まれの同級生。團十郎が新之助だった頃、尾上辰之助を名乗っていた尾上松緑(49)を含めて「平成の三之助」として脚光を浴びた。26日に千秋楽を迎えた「團菊祭五月大歌舞伎」で3人がそろい、「いろんな話をしました。團菊祭は音羽屋にとっても、(團十郎家の)成田屋にとっても大事な公演です。今後もより盛り上げていければ」と意欲を見せた。 22年の13代目市川團十郎襲名披露興行では「助六由縁江戸桜」で女形屈指の大役・三浦屋揚巻を勤めて新團十郎の門出に花を添えた。團十郎も今年4月の取材会で「三之助の3人で何かやりたいという思いが強い。歌舞伎のために何ができるか、考えられる仲間でありたい」と語っていた。 音羽屋の伝統に従い、立役と女形の両面で力を発揮してきた菊之助。8代目として、どんな菊五郎になっていくのか。父は江戸の風情を感じる世話物を当たり役にしているが、女形の大役で気品あふれる美しさが魅力の菊之助は「女形を大事にしたい。さらに父も演じていない時代物、世話物にも挑戦していきたい」と思い描く将来像の一端を明かした。 来年5、6月の襲名披露では音羽屋ゆかりの演目がズラリと並んだ。「(弁天娘女男白浪の)弁天小僧は父の当たり役。道成寺は、来年没後30年の祖父(尾上梅幸)にゆかりがある演目。心情を大事に演じていきたい」。菊五郎は「何も心配はしていない。今のまま、どんどん成長してもらえたら」とエールを送った。(有野 博幸) ◆なぜ尾上菊五郎は大名跡か? 歌舞伎界で最高峰の名前として知られるのが市川團十郎。尾上菊五郎がこれに続き、「團菊」と言われるようになったのは、明治時代にさかのぼる。歌舞伎界にも近代化が迫る中、当時の9代目團十郎は主に時代物、5代目菊五郎は世話物を得意とし、それぞれの芸を磨き上げて現在につながる歌舞伎の型を作ったとされる。1887年に初の天覧歌舞伎が挙行された際にも共に出演。歌舞伎の社会的地位を向上させ、歌舞伎の中興の祖となったことから、「團十郎」と「菊五郎」は特別な名跡となった。 ◆8代目尾上菊五郎襲名披露興行予定 ▼2025年5月 東京・歌舞伎座 (昼の部)「二人道成寺」 (夜の部)「口上」「弁天娘女男白浪」 ▼6月 東京・歌舞伎座 (昼の部)「菅原伝授手習鑑」から「車引」「寺子屋」 (夜の部)「口上」「連獅子」 ▼7月 大阪・大阪松竹座 ▼10月 名古屋・御園座 ▼12月 京都・南座 ▼26年6月 福岡・博多座
報知新聞社