【電力株に生成AIのインパクト】北海道電力は年初来2倍超、九州電力7割高…電力需要拡大や半導体工場建設が追い風に
インターネット普及に次ぐ社会の変革ドライバーとして期待がかかる生成AI(人工知能)。米巨大ITを中心に生成AIへの投資も本格化し、普及が急速に進んでいます。世界の株式市場でも生成AIが最も関心の高いテーマの1つとなるなか、生成AIの普及で恩恵を受ける産業はどこか。今回は生成AIの波及で電力需要の拡大が期待される「電力株」について解説します。(JBpress) 【表】電力株が軒並み上昇、年初来の上昇率は? ■ 「電力株」指数、東日本大震災発生前以来の高値に 生成AIの開発に不可欠な画像処理半導体(GPU)を主力製品とする米半導体大手のエヌビディアが好決算だったほか、米IT大手のグーグルやマイクロソフトなどが相次いで生成AIの普及を本格化させていることを受け、株式市場では生成AIに関連した銘柄への投資が加速しています。 生成AIの活用が進むことで影響を受ける業種の一つが電力です。 東証株価指数TOPIX「電気・ガス業」指数は5月28日、東日本大震災が起きる前の2011年3月以来の高値を記録しました。関西電力や東北電力、北陸電力など国内の大手電力会社の株価(6月3日時点)が軒並み昨年末に比べ5割超上昇。特に九州電力は7割高、北海道電力は2.5倍にもなり、同期間の日経平均株価(16%高)を大きく上回っています。 米国でも、電力小売りや原子力発電を手がけるヴィストラの足元の株価は約93ドル(約1万4300円)と昨年末から2.4倍となり、株式市場でお祭り騒ぎとなっているエヌビディア(同2.3倍)を上回る急騰ぶりを見せています。再生可能エネルギーや原子力発電の米国のコンステレーション・エナジーの株価も23年末比で78%上昇しています。
■ ChatGPTの電力消費はGoogle検索の10倍 「電力株」が上昇している背景に、生成AIによる電力需要拡大への期待があります。生成AIの利用が広がることを見込み、大量の情報処理の基盤となるデータセンターの建設が相次いでいます。膨大な電力を消費するデータセンターが増えることで、電力需要の拡大が見込まれているのです。 国際エネルギー機関(IEA)によると、米Open AIの生成AI「ChatGPT」が質問に1回回答する場合の消費電力量は2.9ワット時で、「Google検索」の検索1回あたりの消費電力量のおよそ10倍に相当すると言われています。 生成AIの利用拡大を背景に、世界のデータセンターの電力消費量は26年に22年から2.2倍の1000テラ(テラは1兆)ワット時に拡大すると予測されています。これは日本の年間電力消費量に匹敵します。 国内では人口減少や省エネの浸透で電力消費量は右肩下がりでしたが、国内の電力需給を調整する電力広域的運営推進機関(OCCTO)は24年度を境に上昇に転じると予測。33年度には8345億キロワット時と23年度(推定実績)より4%程度多くなると想定しています。 OCCTOは「人口減少や節電・省エネなどの減少影響よりも経済成長やデータセンター・半導体工場の新増設が続くため」と分析しています。 特に株価の上昇が目立つ北海道電力の管内ではラピダスによる次世代半導体の製造工場の稼働が計画されています。北電に次いで株価の上昇が目立つ九州電力も熊本県で建設が予定される半導体の受託製造世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)や、ソニーグループの半導体工場などを抱えています。 半導体関連企業の進出に伴う電力需要の拡大も株価を押し上げる一因です。