アメリカでも花開いた印象派 多様で豊かな広がり、ウスター美術館名品でたどる あべのハルカス美術館
2024年は「印象派」という言葉が生まれてから150周年。フランスに現れた印象派がヨーロッパ、アメリカ各地などへもたらした影響をたどる展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」があべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)で開かれている。米ウスター美術館所蔵の日本初公開コレクションを中心とした、世界各地で花開いた印象派の魅力を存分に味わえるラインアップだ。2025年1月5日(日)まで。 【写真】リンゴ園に降り注ぐ、柔らかな春の光。アメリカ印象派の傑作 印象派は19世紀後半にフランスに出現、第1回印象派展は1874年、パリで開催された。当時、大都市パリには各国から多くの画家が学びに来ており、印象派に触れた彼らは新たな表現手法としてその様式を自国に持ち帰った。 アメリカ・ボストン郊外のウスターにあるウスター美術館は、1898年の開館当初から印象派の作品を積極的に収集、1910年代にはクロード・モネの「睡蓮」を美術館として初めて購入した。今展では、モネやルノワールなどフランス印象派、アメリカやドイツ、北欧、日本などの印象派作品約70点を紹介している。 展示は5章立て。印象派の先駆けとなるバルビゾン派やレアリスム作品の第1章を経て、2章ではフランス印象派の画家らと直接交流を持ち、影響を受けたアメリカ人画家、メアリー・カサットやチャイルド・ハッサムの作品が並ぶ。そのすぐ横には、クロード・モネの「睡蓮」も展示。あわせてウスター美術館が「睡蓮」を収蔵した経緯が分かる手紙や電報も公開、睡蓮ファン必見のコーナーとなっている。 鮮やかな色彩、大胆な筆遣いなどを特徴とする印象派は、急速に各地に広がっていったが、その多くは、フランスの様式にこだわったものではなく、それぞれ独自のアレンジが加わったスタイルだったという。第3章では印象派が国境を越えて波及したさまを、作品を通して追うことができる。日本でも1890年代初めにフランス留学から帰国した黒田清輝や久米桂一郎らによって、印象派の様式は持ち帰られた。だが伝播がやや遅かったため、さらに新しいポスト印象派などへ、注目はすぐに移っていったという。 特筆すべきは第4章「アメリカの印象派」。とりわけジョゼフ・H・グリーンウッドの2作品が目を引く。ウスター近郊の田園風景を明るいトーンで描いた「リンゴ園」(1903年、ウスター美術館蔵)、厳しい雪景色を陽光が照らす「雪どけ」(1918年、同)は、柔らかくかすれるような筆遣いで、鮮やかに春の光を表現した傑作だ。ウスター美術館から同展に寄せられた「出品するアメリカ絵画の多くはニューイングランドの美しい自然を描いた風景画で(中略)これらの作品はウスター美術館から皆様への使者であり、遠く離れた私たちの風景を眺めていただく窓でもある」とのメッセージとともに、細部までじっくりと味わいたい。 展示を担当した新谷式子学芸員は「これまであまり紹介されることがなかったアメリカの印象派作品に触れることができ、印象派の多様で豊かな広がりが分かる構成になっている。作品を見比べるなどして楽しんでほしい」と話した。
ラジオ関西