『虎に翼』が果敢に踏み込む“性のタブー” 伊藤沙莉が“戦わない女性”の立場に寄り添う
涼子(桜井ユキ)が明かした“毒饅頭事件”の真相
女性の団結を阻み、分断しているのは誰か。野次を飛ばす男子学生や、女性を弱くて守られるだけの存在とみなす社会の視線もそうだが、女性同士の反目も無視できない。寅子は「戦わない女性たち、戦えない女性たちを愚かなんて言葉でくくって終わらせちゃ駄目」とよねに反論した。男女間の不平等が解消されない現在で、今なお有効な言葉である。 よねが言う“無知で愚かな女性”には作られた部分もあった。涼子が調べた法廷劇の元ネタの判例で、甲子は女給ではなく医師、婚姻予約不履行による損害賠償の訴えは裁判で認められており、毒饅頭の防虫剤はチフス菌だった。意図的な改変から、女給で法律を知らない無知な女、というステレオタイプで同情を買う魂胆が透けて見えた。女子部は大学の客寄せパンダで、強くて賢い女性が敬遠されることに変わりはなかった。 第14話を観て、女性への根強い偏見にため息が出た。法廷劇の再検証は、既存の作品をフェミニズムの視点でとらえ直す批評のあり方に通じる。男性中心の社会で、女性はいつの時代も都合よく使われ、力を奪われて分断されてきた。法律を手にした寅子に何ができるのか。毒饅頭を検証するように、事実をベースにして自分の目で確かめることは、最初の一歩になる。
石河コウヘイ