プーチン氏が停戦交渉拒めば、トランプ氏はウクライナ支援強化も 元米国務省特別代表ネグリア氏
【ワシントン=渡辺浩生】ウクライナへの米国の支援は継続されるメドがついたが、米国の関与の方向性が大統領選に左右される状況に変わりはない。元国務省特別代表(経済商務担当)の外交評論家、ダン・ネグリア氏(71)は本紙取材に対し、トランプ前大統領が主張する和平調停案を支持するとし、同氏が再選すれば、対露圧力を強めるために軍事支援が一時的に増強される可能性があると予測した。 ネグリア氏は「米国はウクライナに戦略的な利益を持つ。中露は強く連携しており、プーチン露大統領が勝利すれば、中国の習近平国家主席は『台湾を攻める番だ』と思うはずだ」と強調。ウクライナ向け緊急支援予算が下院で20日に可決されるまで審議が迷走を続けた理由について、バイデン大統領のウクライナ政策をめぐる指導力にも問題があったと指摘する。 バイデン氏は「戦いが続く限りウクライナを支える」と訴え続けたが、「目標は何か、戦争終結の形はどうなるのか」を明示することはなく、ウクライナが必要とする攻撃力ある兵器供与にも常に慎重だった。ネグリア氏は「そこに戦略はなかった」と喝破。バイデン氏には「議員を支援再開へ奮い立たせる力がなかった」と分析した。 ネグリア氏はルーマニア出身で共産党独裁体制の下、財務省に勤務。24歳で世界銀行と国際通貨基金(IMF)の会合に代表団の一人として出席するため訪米中に亡命した。独裁指導者の行動を熟知すると語る同氏は、ウクライナ関与の方向性について、ゼレンスキー大統領とプーチン氏に停戦交渉を促し「戦争をすぐに終わらせる」とするトランプ氏の主張が「望ましい」との見解を示す。 ネグリア氏はトランプ氏再選後のウクライナ戦略について、ペンス前副大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務めたキース・ケロッグ陸軍中将と共同論文を発表。米国など西側は停戦後のウクライナに対し、露の侵略再開を抑止するため「確実な安全の保障」を提供すべきだと主張した。 ネグリア氏は「ウクライナは約17%の領土を失うかもしれない」としたが、残りの領土で民主国家として再生するウクライナに「平和を提供し、経済的に繁栄させれば、東西に分割されたドイツのようにいつか統一できる」との展望を示す。